2005年9月16日(金)
戦後移住が行われてきて半世紀余、温かく迎えてくれたブラジルへ絵画を通して感謝の気持ちを表したい―。戦後移住者十人の作品を展示したサンパウロ戦後移民具象画展のイナウグラソンが十三日午後五時から、在サンパウロ日本国総領事館で行われた。戦後移住者だけの具象画展が総領事館で開催されるのはこれが初めて。会場には、西林万寿夫総領事、野村アウレリオ市会議員を始め、大勢の関係者が訪れた。
一九五八年に着伯した山田彦治さんは十名の画家を代表して「皆様のご協力により、無事に開会できたことを感謝します。温かく迎えてくれたブラジルにこれから何ができるかを考えることが重要。描く人、観る人が一緒になって夢を語っていきたい」と挨拶した。
西林総領事は「ブラジルに移住された方々の貢献に感銘を受けた。色鮮やかで、美しい絵画展を開催できて嬉しく思う。これからも日伯の芸術面の交流が活発になることを期待しています」と祝辞を述べた。
「ブラジル錦鯉品評会に二十五年通っていた」と言う中野光雄さん(75)は一九五九年に渡伯。パウリスタ美術協会に錦鯉の絵を出展し、賞を貰ったことがきっかけで本格的に錦鯉の絵を描くようになった。「これが自信になった。日本文化の普及に繋がればありがたい」。
一九七四年に移住した女性画家の宮下作子さん(58)は「畑」がテーマ。「ブラジルに来た時に日本とは違う赤土に感銘を受けた。見落としてしまいがちなブラジルの田園風景を描いています」と話す。唯一、墨絵を出展した吉本幹さん(68、一九五八年着伯)。現在はモジ・ダス・クルーゼス市での日本祭りに出展している。
陶芸の上薬をつける技師として一九五二年に渡伯した中嶋岩雄さんはその後、絵画学校に通い、四十年絵を描いてきた。「ブラジルにいるからブラジルの絵を描く」とこだわりを見せる中嶋さんは、細かい筆使いが魅力で、オウロ・プレットなど内陸の街風景を描いた。
イグアスの滝など自然を描いた三浦善幸さん(65、一九六一年着伯)は、「これからは東洋の精神で切り込んで、堂々と絵を描いていきたい」と抱負を語った。
展覧会は二十三日まで(土、日曜日閉館)。開館時間は午前十時から午後五時半。十人の画家、各三点計三十点が展示されている。