2005年9月23日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】都心から少し外れた住宅街に入ると、笛を吹いて存在をアピールする夜警が至るところで目につく。彼らは自営の夜警で身の回り品は笛のほか携帯電話のみ。自転車があればそれにこした事はなく、オートバイだと申し分ない。彼らには警察のような捜査権も逮捕権もない。ただ受持ち区間を警備し、異常があれば警察に通報する。
その昔、日本で木戸番のお爺さんや消防団が夜半に、拍子木を打ちながら「火の用心」と歩いていたのと全く同じ光景だ。ただし彼らは警備をアピールして各家庭の戸口を叩き、毎月の警備料として二〇レアルから四〇レアルを徴収する。もちろん各家の自由意思で義務ではない。警備会社従業員組合によると、警備会社の社員およびそれに属する警備員は十二万二千人となっているが、自営業は十三万五千人で毎年一万人ずつ増加しているという。
何が起きるか分からない現在の世相では、たとえ自営であろうともワラにすがる思いで契約する向きが多い。長年の経験があり住民も良く知っている警備員は信用が厚く重宝がられている。例えば住民が夜遅く帰宅すると門の横でエスコートしてくれるし、中には夜警の携帯電話に連絡して帰宅時間を知らせて家の前で待ってもらう。また来客やフェスタをする際は路上駐車の見回りを兼ねた警備も頼める。旅行で家を空ける時も入念に家を注意して見てくれる。
これらは良い類で、大半は現職や退職警官がこれまでの経験から治安の悪い区域を「縄張り区域」として統治、細かく区割をして夜警を振り当てている。夜警は月平均六〇〇レアルで雇われる。ただし集金はボスが行うため、夜警はどの家が契約しているか知らぬし、ひどい所ではボスの顔を知らないという。
前出の組合の調べによると、夜警のほとんどが他州からの移民で、かつて土建業の工員をしたりした失業者だ。中には読み書きもできず、車のナンバープレートも記憶できなかった。ジャルジン・ヨーロッパ区の夜警は兄(元警官)がボスで、二カ月前にバイーア州から出てきて西も東もわからないまま、毎日笛を吹いて歩き回っている。これらの高級住宅街では夜警の警備料を払わなければ、罪悪人に情報を流される怖れがあるとして警備の効果は期待せず、保険料のつもりで払っているという。
警察では、これら警備員を管理したり取締まる権限は有しておらず、所轄の警察署で職業身分証の発給を受け付けている。所定の書類に無犯罪証明書があれば発給される。これらは警察本部に登録され信用できる警備員とみなされるので、夜警に証明書の提示を求めて確認することを呼びかけている。警察によるとこれまで十七万八千人の証明書を発給しており毎月百五十人から二百人が新規に申請しているとのこと。