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毎日ごちそうでした=『ガイジン2』のバッチャン、撮影の思い出を語る=小野あやさん=映画そのままの素顔

2005年9月24日(土)

 女優初挑戦ながら、山崎チヅカ監督の『ガイジン2』でチトエ役を演じ、グラマード映画祭助演女優賞を受賞した小野あやさん(77)。普段は息子と犬たちと暮らし、花や野菜を育ててのんびりと暮らすおばあちゃん。映画の出演と大きな賞の受賞で一躍有名人となったが、本人は変わらずマイペース。「映画の撮影で思い出に残っていることは?」「毎日ごちそうでした」とにっこり。撮影所では「ドナ・ヤヤ」や「ばっちゃん」と呼ばれ親しまれた。映画の雰囲気そのままの小野さんに話を聞いた。

 「『ノン・ヌンカ』って。ガブリエルが家の土地を買いにきた場面はよく覚えてますね」
 見つめる台本にはセリフを覚えるために書き写した小さな字が並ぶ。
 番犬三匹が絶えず彼女の足元に寄ってくる。一九二八年山形県生まれ。七人の子供を育て、孫は十四人、ロンドリーナ市に住む。
 グラマード(リオ・グランデ・ド・スル州)やリオ、サンパウロへの長旅、相次ぐ取材で体調を崩し、風邪を引いてしまった。
 「大好きな庭いじりができなくて残念、花を育てるのがとっても好きだから」
 映画に出演したのは娘に誘われたエキストラのオーディションがきっかけだっや。選考用の写真を持って行くことを知らず、たまたまハンドバッグに入っていたカラオケ大会での写真を出した。
 オーディションでは青年とけんかするシーンとお墓参りするシーンを演じるように言われたが、けんかは上手くいかなかった。「この人だめ」と誰かが言っているのが聞こえた。「お墓参りのフリは自然にすることができて、チヅカさんに『明日おいで』と言われた」。それで映画出演が決まった。
 「撮影所ではみんながヤヤ、ヤヤと呼んでくれてかわいがってくれてね、楽しかった」。女優初挑戦だが「よく書いてあることを読んで、自分に関係あることを思ってやりました」と役作りには苦労しなかったようだ。土地を売るのを断る場面では、三十年間住んでいるいまの家を、苦労して手に入れたことを思い浮かべたという。「エコノミザして一コントずつ貯めてね、二十一年間払いつづけたから、大切な場所という気持ちが自然とできた」。
 三ヵ月の撮影期間では大変なこともあった。日本の冬のシーンを撮影するときだ。「法事の場面を撮ったのはとても暑い日だったのに、冬に見せるためにショールをまいて一時間正座をしていなくてはいけませんでした。汗びっしょりになって辛かったですねえ」。
 映画祭の当日、会う人会う人が自分を見て「パラ・ベーンス」と声をかける。「どうしたのかなと思いました。映画を褒めてもらったと思って嬉しかった」。「キキット(グラマード映画祭のトロフィー)もらうなんて知らなかったからね、名前を呼ばれたら恥ずかしくて顔をかくしちゃった」。そのときの様子を思い出して顔をくしゃっと縮めて笑い、手で覆う。
 「チヅカさんの映画だったらもう一回やってみたい。でも家族と話したり花を育てたりするのが楽しいし、旅行も大好き」。趣味を持ってマイペースで生活する、それがこの素敵な笑顔の源だ。