2005年9月28日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】ブラジルは、マネロン(資金洗浄)防止に関する専門家不在のため、タチの悪い野心家にとって天国といえる。金融犯罪者らは手を汚すことなく、額に汗を流すことなくエレガントな日々を送っているとクリチーバ連邦裁判所のセルジオ・モーロ裁判長が嘆く。最も大規模なマネロンは旧パラナ銀を舞台にCC5(外国居住者口座)によって行われた一〇億レアルの不正送金だ。もしも関与疑惑者リストを発表したら、ブラジル全土に激震が走ったに違いない。
外国居住者の定義があいまいなのも問題だ。定期預金の景品として国籍を無料提供する国もあるので、多国籍者が増えている。普通百八十三日以上を外国で生活すると外国居住者とみなされる。しかし多国籍者には関係がない。外国居住者の概念が変わり、国際人化の傾向が生まれている。
ブラジルで横行するマネロンにメスを入れるため、法務審議会は金融犯罪法廷を立ち上げ、若き俊英モーロ氏を裁判長に指名した。マネロンを行うため不正資金の出口は、専ら旧パラナ銀行フォース・ド・イグアス支店が舞台であった。
これまでに外国へ運び出された違法送金は、総額二四〇億ドルに上る。今回の議会調査委員会(CPI)で、その全容が解明されるに違いない。外国で違法送金の水先を務めた女優カロリーナ・フェラスの愛人ラニアードが四月に米国で逮捕された。
法務省は違法送金に対し、どんな手を打っているのか。ヤミ為替業者の手を得て地下に潜ったブラジルの資産をいかに回収するのか。ブラジル全国で行われているマネロンをいかにして取り締まるのか。出所も行き先も分からないブラジルの金融資産をいかに回収するのか。
法務省は最近のマネロンの傾向を研究している。マネロンは多種多岐にわたるが、新手はない。全ては前例があって真似ただけである。マネロンは国境を渡ることで金融制度の規制を免れる。
各国間の国境には一瞬のスキマがあり、発覚したときは手の届かない所へ逃げている。容易に法の網を潜れるのがミソだ。違法送金をコードシステムや暗証システムで保護するタックスヘイブンもある。資産家は、金を儲ける国と儲けた金を保管する国とに使い分けるのが常識となった。
ブラジルは最近十年間、CC5(外国居住者)口座による資産の海外移転が激しい。イグアス経由の違法送金が立件されたケースは、個人が千八百人、法人が二千社ある。現在は租税協定により、外国の銀行口座も開示ができる。違法送金は不法資金と見なし、流れを追及する。
ブラジルはマネロン法九六一三号を制定したが、欠陥法であった。マネロンだけを取り締まるのは片手落ちで、同時進行で脱税時点から取り締まらないと同法の意味がない。さらに最近は脱税に加えて汚職が仲間入りし、マネロンは大規模にビジネス化した。
もう一つの問題は法整備である。ブラジルの刑法は、四〇年代に制定された時代遅れ法である。保釈金は、笑い話にもならない非現実的金額が罷り通っている。裁判は最低、三回以上開廷が要求される。被告は社会的地位と教育水準で、取り扱いが異なる。マネロンについては、犯罪の度合いなどが無視される。