2005年9月28日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙八日】財務省の市場開放政策に示した産業界の反応は、馬が足の怪我を治療する獣医を蹴るようなものではないかと経済評論家のセウソ・ミング氏がいう。輸入関税の最高率三五%を一〇・五%に引き下げ、現行の平均税率一〇・八%を七・四%に引き下げると財務省は発表した。
輸入への門戸をさらに開くと、二つの問題が想像される。一つは国際舞台で中国を始め東南アジアの新興国が積極的な輸出攻勢に出て、破格の廉価でブラジルの縄張りを荒らす。もう一つは世界貿易機関(WTO)を通じて先進国市場へアジア諸国が強引な売りこみを掛けるから、先進国は輸入障壁の新手を考え出す。
ブラジルの工業部門は、国際競争で厳しい試練が待っている。市場開放は劇的な近代化を強制し、高性能の精密工作機械の輸入と生産効率の向上を求める。ブラジルは、事情が酷似する二十世紀初期の米国産業に学ぶ必要がある。
米国は二十世紀初期、現在のブラジルのようなコモディテイ(国際必需品)の大生産国であった。米国産業の大躍進は一八九〇年に起きた。その米国へ原料を輸出したのは、ブラジルなどの途上国であった。しかし、現在は中国や東南アジアがブラジルに取って代わろうとしている。
ブラジルは過去の経験に安住しないで,その後躍進した米国産業の轍を踏めば、これまでなかった新しいチャンスに恵まれる。国際経済をけん引する米国とアジア諸国との間に空洞がある。これがブラジルのチャンスではないか。
レアル通貨の高騰により、ブラジルの一次産品は高騰を余儀なくされる。レアル通貨高騰抑制のため、輸入にも力を入れねばならない。半製品の輸入とその加工部門がこれから忙しくなるとみられる。
レアルに対するドルの下落は、市場関係者が言うようなものではない。国内の高金利と海外の好景気が短期的に影響した。先進国市場への加工品輸出では、アジア諸国はインフラが整っているので、ブラジルよりも有利。ブラジルの輸出がレアルを引き上げたとする見方は少し違う。
これまでブラジルが得意とした繊維や靴、玩具などは、為替政策や金利政策、税制の見直しを行わない限り過去のものとなる。メーカーは故障した自動車を乗客が乗ったまま、押し上げているようなもの。
関税障壁でメーカーを保護するより、国内の減税を実施するほうが先決であり、有利でもある。それは先進国内でも同じである。国内の減税を実施すれば、農産物の生産原価も低減され、輸出も先進国市場へ大量に積み出しできる。
ブラジルの産業界が国際市場の仕組みを理解せず、ブラジルのため備えられたチャンスが見えないなら、財務省の市場開放政策に反抗しても無駄なあがきになる。