2005年9月28日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】ブッシュ米大統領は二〇〇一年九月十一日、米国本土がテロリストの攻撃を受けていると報告されたとき、「まさか…」と信じられなかったという。政事に熱中し何か考えごとをしているときは、現実世界へ帰るのに時間がかかる。
元シテイバンク頭取のアマラル氏が、トンチンカンな伯米の両大統領に次のような苦言を述べた。同時多発テロの仇討ちと称し、ブッシュ大統領はオサマ・ビン・ラディンを捕まえろと命じたが、未だにつかまっていない。次は国連決議を無視して、イラクへの武力介入に踏み切った。
イラクの泥沼から撤退するために栄誉ある帰還を考えているが名案はない。最近ではハリケーン・カトリーナの不手際がある。問題なのは死者数ではなく、当局による対処の遅れだ。被害の実態を把握できていない。現実に戻るのに時間がかかり過ぎたのだ。
ハリケーン・カトリーナはカテゴリー5と類別され、強度は分かっていた。それなのにブッシュは別荘で昼寝をしていた。ハリケーンの強度を分かっていながら、当局は不十分な態勢で対処した。
ニューオルレアンのダムは強度3以上のハリケーンが来たら耐えられないと専門家が警告していた。ブッシュは何が機能し何が機能しないのか調べろといっている。この体たらくでブッシュ政権の評価が急降下し、米国民は大統領に厳しい審判を下した。
一方、ブラジルは自然災害で多数の犠牲者が出ることはない。ここで起きるのは政治危機の嵐である。ルーラ大統領も事態に危険信号を発した。史上最大の政治危機で議会を泥沼に陥れ、PTを正体不明の化け物にした。
カトリーナと政治危機には二つの共通点がある。一は、大統領が事態を前以って知っていた。ジェフェルソン元下議の告発によれば、取り巻きの三人は裏金の事実を熟知していた。側近中の側近が大統領を無傷で守ることは不可能と知っていた。
ブラジルで汚職は珍しいものではない。政権を任せてくれれば、汚職を撲滅すると約束したのが労働者党(PT)であった。それらの公約を忘れ、マスコミも含め国民はブラジルの悪癖とあきらめている。
二は、政府が大統領は何も知らないし無関係と丸めようとしている点。PTを離党したミルトン・テメル元下議は、大統領は火星人で、徹底的にシラを切るつもりだと糾弾した。
大統領が汚職も裏金も知らなかったというなら、普段閣僚と何を話しているのか。臭い物にフタをしているのか。大統領府の情報機関は何をしているのか。もしルーラ大統領の言う通りなら、大統領自身が危険物と言わざるを得ない。