2005年9月28日(水)
【ヴェージャ誌一九二二号】ブラジル経済は長い試行錯誤の過程を経て、ようやく足が地に着いたようだ。貧乏人だけが払う税金といわれるインフレも、どうやら治まったらしい。次は第二の開国といわれる市場開放が二〇〇六年に実施される。貧乏人はもちろん時代感覚に乏しい人が市場開放の津波に呑み込まれそうだ。いまブラジルで何が起きつつあるのか。
革命にはイギリス型とフランス型があるらしい。いまブラジルで起きようとしている産業革命を二つの革命と照合しながら観察する。フランス革命は市民階級から起き、新政治体制を打ち立てた。イギリス革命は議会から始まり、王室も含め全てを議会が管理する体制をつくった。
結論からいうと、フランス型は民主主義を確立するために国民を政治的に覚醒させたが、経済的活路を提供しなかった。イギリス型は経済動物としての国民を覚醒させたが、市民権を曖昧にした。この二つの良いとこ取りが二十一世紀、ブラジルで結実した。
ブラジル人は、政治家の非現実的公約が信じられないこと、貧乏人は開かれた経済を勉強すること、政治危機と経済は無関係であることが、すぐに分かるはずだ。過去の愚かな失敗を繰り返さないため、国民は政治をより深く理解しなければならない。
例を挙げて説明する。最初の市場開放はコーロル前大統領によって実施された。ブラジルが国際市場へ参入するために、産業の近代化と技術革新は避けて通れない道である。〇六年以降ブラジルの農産物が世界を制覇するため、国内市場も開放を余儀なくされる。
公的資金は、銀行や基幹産業の救済に原則として交付しない。お荷物となっていた公的機関は民営化する。政府が資本参加した公社は民営化し、サービスと製品のコスト・ダウンを図る。特例は赤字公社エンブラエルの再生だ。
インフレ対策は角を矯めて牛を殺すと批評されるが、長期の外国投資導入にインフレ沈静化は不可欠である。外国投資は雇用を創出して国民の所得を引き上げ、消費を刺激する。
財政黒字は聖域だ。公立銀行の底なし沼は解決したが、政府の垂れ流し歳出の悪癖はまだ治っていない。経済三種の神器は、基礎収支、変動制為替、インフレであるが、この三つの釣り合いが財政黒字を生む経済の活殺剣といえる。
最後に、国民は政治と経済の審判員であるため、以上のことは最低限知っておく必要がある。