2005年9月28日(水)
料理をしながら、楽しく日本語学習を──。外食産業の発展や女性の社会進出などで、レトルト食品や総菜売り場が充実。家庭で食事をつくる機会が減ってきたともいわれる。サンパウロ市ジャグアレー区のひまわり学園(佐藤吉洸園長)では、子供たちに食品の大切や衛生感覚を身に付けながら、日本語の表現を学んでもらおうと、年に三~四回授業に料理教室を取り入れている。
今月二十六日午後三時。六歳~十歳を中心にした約三十人が「おにぎり」に挑戦。年齢や性別などに合わせて三つのグループに分かれ、用意されたご飯を握った。子供たちははしゃぎながら授業を楽しみ、本人がつくったものをおやつにほおばった。
語彙の数を増やすのが大きな目的で九七、九八年ごろに始めた。教師の児玉恵美さんらは「日系人家庭でも梅干や味噌汁を食べなくなったり、お手伝いさん任せのところがありました」と明かす。
同園では毎月語彙のテーマを設定。今月は日本食だったので、〃実践〃の形で料理教室が企画された。「動詞の使い方などをうまく教えることができます」と意図を説明する。これまでチョコレートやクッキーなどを取り上げたところ、保護者からレシピが欲しいという依頼も入ったそうだ。
衛生観念を養うのも狙い。手洗い、爪切りなどを徹底させた。米粒をクラスメイトに投げつけている生徒に対して「食べ物を粗末してはいけません」と厳しく叱責していた。
木村りなさん(5つ、二世)は「とても楽しかった」。北川マリーナさん(5つ、三世)は「おばあちゃんの家でシュラスコしたら、おにぎりをつくるのを手伝うのよ」と笑顔を見せていた。
ブラジル日本語センター(谷広海理事長)の丹羽義和事務局長は「日本語学校に料理を取り入れているのは、結構珍しいことではないか」とみる。
国際交流基金サンパウロ日本語センターの遠藤麻紀さんは、二〇〇〇年一月の合同研修会で日本語授業への料理の導入について、実践報告した。「複式授業で、様々なレベルや年齢の子供が同じ活動ができるもの。小さい子供が活発になるし、年長者には復習の意味にもなる」と語り、本人の体験を踏まえ効果が大きいことを強調している。