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衛星網設置計画を始動=15億ドルを投入=09年に3基打ち上げへ=宇宙産業の新時代幕開け

2005年9月29日(木)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十八日】政府は二十七日、一五億ドルを投じてブラジル上空にサテライト・ネット(衛星網)を設置する計画を秘密裏に始動した。二〇〇九年にブラジル静止衛星(SGB)三基を軌道に打ち上げる計画だ。政府は宇宙衛星で世界的権威のある研究所へ技術指導依頼書を送付した。同研究所は宇宙軌道のメインテナンスや気象観測、国防戦略、応用技術、サテライト・ナビゲーション、アマゾン地域の監視体制などで実地指導を行う。さらに計画ではGPS(側位)監視体制と地上コントロール・センター、観測所のインフラ整備も含まれる。
 これまでのアマゾナス監視システムを上回るブラジル全側位プロジェクトの実施を急ぐことになった。政府は〇六年までに、細部についても最終段階にこぎつける予定。ブラジル上空には、すでに五十基以上の静止衛星が空軍管理下で活動している。
 〇九年に打ち上げるSGB三基は、多種目的衛星である。この衛星で政府は、航空機の飛行管理や船舶の航行管理、地上の連絡体制強化、移動式観測センターなど数々の監視や観測作業の高度化を図り、最終的に電話やエネルギー、エアコンのインフラ整備も図る。
 第一期計画で六億三七〇〇万ドルを投じ、衛星二基を製造した。電話企業などからのサービス支払いにより、五年で償却した。今回の計画は三基、発射推進ロケット付きの衛星で、一五億ドルになる予定だ。同時に地上設備も建設する。
 三基のうち二基は、テレビや電話などのCバンドと携帯用のLバンド、軍事用のXバンドが搭載される。残る一基には、超短波一四から12GHzのKuバンドが搭載される。これは米国などで気象観測の映像送信に使っている衛星と同じ高性能を持つ衛星。
 同ネットの整備コストは、電話や連邦政府機関のテレコミュニケーション、軍事目的の通信、地方自治体の需要で充分償却できる。これからは民間需要や海空軍情報、一般軍事情報、国防情報なども含めて、SGBがサービスを提供する。
 SGBシステムは、新時代の宇宙産業として発足する。同システムは連邦機関や公社へのサービス提供の他、投機にも有利と計画立案者はいう。ブラジル製衛星は宇宙戦略と通信戦略、気象観測の三点で外国製に優ると自負する。
 技術的に優位なのは、定評あるAtech社の技術陣のお陰といえる。同社はムタ・タカシ社長の下、五百人からなる世界一流の宇宙工学専門家を抱えている。ブラジルの宇宙関係ビジネスの九〇%に同社が関係している。
 SGB計画で蘇生しそうなのがテレブラスだ。同計画が始動すれば実際にシステム操作を行うのが、復活させたテレブラスではないかと言われている。従来の宇宙ビジネスに限らず、多種多目的の複合サービスを提供する公共機関が求められていた。
 そのためPT政権は、テレブラスの民営化に反対していた。またSGB計画の一五億ドル予算捻出も、ひと悶着が予想される。現状で需要は何とか消化しているからだ。これからの宇宙時代への先行投資をどう見るかが問題となっている。