2005年10月5日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙九月十六日】経済評論家のセウソ・ミング氏は、レアル通貨の為替率が対ドルで二レアルとなる可能性はあるが、三レアルとなる可能性は低いという。高金利は外資を呼び込みレアル通貨を引き上げる。低金利にすればレアル通貨は下がると、百人の経済学者のうち九十九人は思っていた。基本金利を引き下げれば、レアルは下がると思った。ところが市場の反応は大方の予測をくつがえした。
それは、為替市場を逆行する一台の自動車のようだ。金利を下げたのにレアルは一・四%上げ、二・二九六レアルに付けた。ドル通貨は底なし沼やブラックホールのようだ。まるでドルは、二レアルに向かって突進している。
外資の流入だけが、レアル通貨を引き上げているのではない。ブラジルのように外資逃避に悩まされた国は、金利を上げれば外資が帰ってくると長い間思っていた。それが外国に積んであった預金が里帰りをしている。無制限な外国への資産移転や通貨の持ち出し自由化ですら、レアルの高騰につながっている。
輸出業者は為替契約によって、バイヤーからの送り状の補足分に対し、前払いを受ける。これもレアル通貨の高騰を手伝う。輸出業者は輸出契約書を銀行へ持って行くと、輸出品を船積みしてなくても代金(ACC)をもらえる。輸出業者はこの前払い代金を金融市場で運用する。
輸出業者には、この運用益は臨時収入だ。レアル通貨が高騰しても、輸出業者は臨時収入で儲けている。ここでも為替は輸出業者に有利に展開している。
レアル通貨を高騰させる理由は、高金利の他にも数々ある。レアルが高騰する最も大きな理由は、ブラジル金融市場への投機が魅力的で外資を呼び込んでいることだ。ブラジルでの金融投機がこんなに儲かるのに、年間六%のドル通貨の値上がりを待ってタンス預金をするバカはいない。
ドルが大挙ブラジルへなだれ込むということは、それだけの需要があって、レアル高ドル安に拍車がかかっていることを意味する。過去七カ月間を見ると、どの産業部門も輸出の増加もレアル通貨の値上がり率には勝てない。結果としてレアルは雪崩現象を起こした。
輸出業者はACC取引の味を覚えた。これらの現象は、基本金利を下げてもレアルが下がらないことを意味している。金利を下げたら外資の流入が止まるか。そんなことはない。外資は長期投資で入り、流れは止まらない。ブラジル経済が成長したことを、外資が認めたからだ。
外債の決済能力を示す十五日のカントリーリスクは、一五ポイント下げ三六八ポイントとなった。九七年来の最低水準だ。それでも時代遅れの経済学者がいて、ドルの回復を期待している。その一人がデルフィン・ネット氏だ。
時代は変わった。ブラジルは成長した。もう往年のブラジルではない。それでも様子を見て経済の実態を確かめようという、救われない石頭がいる。新しい時代のブラジルに相応しい考え方で、事業計画を立てよう。ナポレオンの皇帝には皇帝の妻をではないが、新時代には新発想で。新しい酒は新しい革袋に。
実情を確かめて前進する経済政策は、言葉は美しいが葛藤と混迷の泥沼にはまり自らを滅ぼす。ブラジルにはこの種の経済学者が多く、経済発展の邪魔となった。金利を下げても何故かドルは下がらない。ドルの洪水は世界に溢れているのだ。レアル高で状況は不利だと泣き言を言うなら乗り遅れる。輸出は確実に伸びる。国際市場の需要動向を見れば、自明の理だ。ブラジルの時代が戸口の前まで来ているのだ。