2005年10月5日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙九月十三日】通貨政策委員会(COPOM)は、インフレ率が目標内に収まったと発表した。ブラジル国内の通貨流通量も、増やす意向であるという。金利引き下げは、患者を殺しかねない劇薬を投与した、COPOMというインフレ病の治療医が病状回復に従って投与量を減らしたのだ。
投与した劇薬は高金利であったが、インフレ病に効果があったのは高金利ではなく、為替であったことが新しい発見と言える。どのように高金利でインフレを抑えようとしたかは一目瞭然である。金利引き上げで通貨流通量を減らした。
自動車に例えるなら,運転手が少量のガソリンを給油するなら、自動車はスピードが出ない。通貨の流通量を減らせば、消費は減退する。そのため商品やサービスの提供者は、価格を下げる。
ここで問題なのは、ブラジルの経済システムに歴史的な癖があることだ。その一つは生活費の三〇%が、法令や政府が締結する契約書によって決められる。それは電話料金や電力料金、水道料金、家賃その他だ。この生活費上昇に、いくら高金利政策を採ってもインフレ抑制にならない。これら公共料金は予定インフレ率で調整する。
他の例は、クレジットへの金利の影響である。多くの消費者は、金利を含めて商品がいくらなのかとかローンの利率はいくらなのか考えない。毎月の分割払い額がいくらになるかしか興味がない。収入の範囲でローンが払えるなら、やめるべき買い物もする。
中央銀行は金利をいくら引き上げても、消費者は買いたければ買うことが分かったはずだ。今まで、それが分からず、産業を殺しかねない世界一の超大量の劇薬を投与した。
多くの経済学者が超高金利を批判し、経済政策の変更を忠告した。そんな所へレアル高騰の為替異変がやってきた。為替異変は、二〇〇六年になって実現した四一〇億ドルに上る貿易黒字の落し子だ。この貿易黒字がレアル通貨に対し、ドル通貨を突き落とした。
中銀は〇五年十二月から〇六年三月まで、レアル高騰の抑制と外貨準備のためにドル購入を考えていた。中銀は熟考の結果、レアル高ドル安はインフレ抑制の金利政策よりも効果があることに気付いた。
ドル安により国内で消費する輸入品が安くなった。輸入原料と加工品の値下がりにより、ライバルの国内メーカーも価格を下げ始めた。それで中銀は三月、ドル通貨引き上げのための介入を中止した。ドルを落ちるだけ落とし、インフレも落ちるだけ落とした。
それから四カ月後、デフレ傾向が現れ始め、生活費にも変化が起きた。次の問題は、いつまでドルが下がり続けるかだ。いつまで金利の引き下げが可能なのか。金利が先進国並みに下がったら、ドルが上がらないかと経済学者が心配する。その先はどうなるか、みんなで考えよう。