2005年10月7日(金)
「東京都杉並区は第二のふるさとです」。そう歯切れのいい日本語をしゃべるのは、米国日本語教師協会連合のスーザン・シュミット事務局長(59、非日系)だ。日伯文化連盟主催の日本語教育国際シンポで二日、「アメリカの日系社会における日本語教育について」を講演した。
米国の学習者数は十四万人もおり、その八割から九割が非日系人。カリフォルニア州などの西海岸にとくに集中している。いわゆる日系子孫向けの継承日本語の学習者は「二万人にもならないかもしれません」という。
日系四~六世の若い世代において日系アイデンティティが薄れている関係から、日本語学習の価値に疑問をもつものが増えている。ただし、最近きた新一世や二世の間では日本文化を大事だと考え、日本語教育の重要性が認識されている。
継承日本語教育にたずさわっている全米各地の学校のネットワークを作り、情報交換を活発にする必要性も検討されている。「継承語学習者と非継承語のニーズが異なる」「適切な教材が欠如している」などの問題点も提起された。
さらに「現地で生まれた人が増えているので、アイデンティティの問題など、言語としての指導を超えた指導が必要という議論があります」と報告する。
教師数は全米で三千人を数え、うち八百人ほどが非日系教師だ。母国語を日本語とする教師が半数をしめ、全体的に女性がおおい。特徴としては、選択科目として日本語を教える高校が約千五百校もある点だ。そのため公立校で働く教師がかなりの割合をしめ、「給与は比較的安定している」と説明する。
と同時に、公立学校で日本語を習得するのが一般的になったため、逆に日本語学校の存在意義が問い直されている状態。「公立高校の授業に比べ、日本語学校の教授スタイルは旧式なままであるケースが多いため、『日本語学校の授業はつまらない』と考える学習者も多くいる」という。
カリフォルニア州日本語学園協会(六三年設立)は六七年からクレジットテストを実施している。これに合格すると、公立高校の外国語科目の単位として認められるという画期的なものだった。しかし、日本語学校によって教育内容がバラバラな実状があるため、じょじょに認めない高校が増えてきているという問題が生まれてきている。
ブラジル同様、アニメや漫画、JPOP(歌謡曲)の影響で、日本文化に興味を持ちはじめる学習者が多い。「大学生では女性が割と多いですが、アニメなどから入ってくる人は男性が多い」と分析する。
「この十年、十五年ぐらいで学習者が特に増えました。第一外国語はスペイン語を習う人が圧倒的に多いですが、第二外国語としては、日本語はフランス語やドイツ語にならぶ言語になってきています」。
日本文化に興味をもったことから、シュミットさんは二十五歳で日本語を勉強しはじめた。半年間、毎週一回ずつ授業をうけて七二年に訪日。出版社勤務などをしながら二十三年間も東京都杉並区に住んだため大変な愛着を感じている。
九七年に帰米後、日本語日本文学学会の常任理事になり、だんだんと日本語教育に本格的に関わりあうようになった。
「日本語学校はカリキュラムの見直し、教師養成の重要性、学校の役割の再定義など、さまざまな改革が必要となっています」と語り、先進地北米の視点から警鐘を鳴らした。 おわり
■日本語教育シンポ=多様化する学習者への対応=連載(3)=ドイツ系教師は3割のみ=「家族を養う人も大勢」