2005年10月7日(金)
INSS問題解決に一歩前進――。サンパウロ市社会福祉審議会(COMAS)がブラジル日本文化協会(上原幸啓会長)を慈善団体として認可したことが先月三十日の官報で、明らかになった。文協存続の根幹にかかわるとされていたINSS(国立社会保険院)罰金問題解決に向け大きな進展とみられる。文協は、〇一年四月に国家社会保障審議会(CNAS)から慈善団体登録取り消しを通告されたことで免税特典がなくなったため、INSSから、約二百万レアルもの罰金を課せられていた。申請業務を行っていた吉岡黎明副会長は、「早々に連邦政府に対し申請を行う」と話している。
〇一年の登録取り消しを受けて、再考慮の申し立てを行ったのは、百三十七団体。うち許可されたのは文協を除く三十二団体のみ。
これにより、文協の慈善団体登録は市レベルから申請を行わなければならなくなり、今回の認可でCNASへ申請する権利がようやく発生した形だ。
同年四月十八日の官報によれば、文協の問題点は大きく五つが指摘されている。〇三年に行った再申請は不認可となっており、経営コンサルタント会社と法律事務所に書類作成を依頼し、九月初旬に申請した今回が三度目の正直となった。
問題点の一つ目は、社会福祉法にある「家庭、母親、幼少年、老人の保護」「児童や青少年の救済」「身体障害者の社会復帰促進」「教育援護、医療援護活動をする」などの条件を満たしていないことを指摘されたことだ。「慈善団体というよりも文化団体にふさわしい」と判断されていた。
これに対して、文協は、ブラジル日本移民史料館へ州立学校生徒を無料招待、大豆普及のための研修を貧民街で開くなどの事業を申請内容に盛ん込んだことが認められた。さらに、今後はそれぞれの活動実績や会計などを報告する必要もあり、文協の自発的な活動と事業拡大も求められることになるようだ。
また、「COMASへの登録は、福祉団体がCNASに対し、慈善団体証明を申請するための基本条件である」という指摘は、今回の認可により、事実上解決。
「全ての資金、資産運用を国内で行う」ことを前回証明しなかったことも問題とされていたが、「会計報告で十分可能」との申請が認められた。
一方、慈善団体認可に重要な要項の一つに「年間収益の二十%以上を公益事業に無料で奉仕」することが求められているが、文協の年間収益は約二百万レアル(〇四年度)。その二割の四十万レアルを公益事業にということになるが、事実上困難といえる。
予算のなかには奨学金や基金など文協が形式的に代表団体となっているものも含まれるため、会計システムの変更が迫られている。今年十二月に行われる評議員会に提出される予算案の内容がCNASの審議にかけられることになる。
このほか、「団体が解散した時には残った資産を、国家社会福祉審議会に登録している他団体に譲渡しなければいけないが、それが定款において確認できない」という問題点については、昨年の定款改正で第十二章(解散)第五八条を作成したことが確認された。
今回の認可で社会福祉専門家を雇用することが義務付けられ、予算案や活動プログラムなどの作成を委ねることになる。
吉岡副会長によれば「会計に関しては多少事務作業が煩雑になるが、(申請に対する)条件は完全に押さえているので問題ない。専門家の雇用がまず第一」と説明している。