2005年10月11日(火)
ブラジル「発見」の地、ポルト・セグーロから南バイーアの三つの移住地、テイシェイラ・デ・フレイタス、ウナ、タペロアをまわった、県連の第二十二回移民のふるさと巡り。五十二人の参加者はブラジル幕開けの史跡を訪ねると共に、それぞれの移住地で先没者の魂を慰め、遠き仲間とひと時の交流を持った。一行はパワーに溢れた南バイーアで「元気」を求める声を聞き、移民と土地とそれらを包む時間に触れ、ふるさと巡りの意義を再確認する旅となった。
小雨がぱらつく九月二十七日朝、サンパウロ、パラナ各地からの参加者はグアルーリョス空港に集合。
「今回もよろしく」。すでに顔見知りの間柄も多い。それぞれこれから一週間旅を共にする仲間とあいさつを交わす。
今回のガイドは、ふるさと巡り随行三回目となる山内シロウさんと、今回が始めての柳沼セリアさん。
「みなさん、大人数ですので言うことを聞いてくださいね、ここから先はバイーア時間になりますが、うっかりしないように注意してください」声を張り上げて呼びかける。
午後十二時二十分、TAM航空JJ3342便は予定通りポルト・セグーロの空港に到着。飛行機から外に出た瞬間に、空の明るさに目が覚める。
「暑いねえ」と、サンパウロから着込んできたコートや上着を脱ぎ、バイーアスタイルに変身する参加者たち。花柄のノースリーブ、海の描かれたTシャツ、サングラスに帽子、準備は万端だ。
そのまま二台のバスに分かれて乗り込むと、さっそく昼食をとるレストランへ移動。バスはヴィンテドイス・デ・アヴリル通りを進む。ブラジルがペドロ・アルヴァレス・カブラルによって「発見」された日付だ。
目的のレストランに到着。「バイーア料理はこってりしているのでまずは日本料理で準備運動をして」とシロウさんが案内をするレストラン・タナカは、田中正弘さんと妻の好子さん、娘のユミさん、美和さん、明子さん家族が営む。普段はバイーア料理を出しているが、今回は特別に刺身や酢の物などの日本料理を用意してくれた。
「豆腐と焼きそばはいつもあるのですが、それ以外は材料を揃えるのに大変でしたね」。日本人の顔が並んだ、珍しい食堂の光景を見渡して田中さんは話す。豆腐は娘さんの手製。
手作りの日本料理にサンパウロから離れた実感もなくくつろぎ、さっそくビールで勢いづく人も。
長崎出身の田中さんは二十歳でサルヴァドールに移住。その後ウナ移住地でスーパーを経営、ポルト・セグーロに来てからは十五年ほど。
「ポルト・セグーロには四十家族くらいの日系人がいるけどすし屋はうまくいかなかった。やっぱりここの料理をやらなきゃだめですね」。
「行ってらっしゃい、気をつけて」田中さん家族に見送られて店を後にする一行。これからが本格的な旅の出発だ。