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熱帯雨林の森で異常乾燥=次々と干上がる川=21市が陸の孤島、17万人救援待つ=雨季到来までに死者多数か

2005年10月18日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】アマゾナス州では史上空前の異常乾燥に見舞われ、主要産業の農業と川魚の漁業が壊滅的な打撃を被り、食糧が底をき、飲料水が不足するという深刻な状況に陥っている。サリモン川の水位が下がったことで支流が干上がり、唯一の交通手段のカヌーが動かずに二十一市が文字通り陸の孤島と化し、約十七万人が救援物資の到着を心待ちにしている。同州知事は非常事態を宣言した。
 九月半ばから続いている異常乾燥でサリモン川本流の水位が下がり、唯一の輸送手段である船の航行が止まり、物資の輸送が遮断された。これにより支流は干上がってカヌーも使用できず、川底の泥に埋まっている状態だ。このため二十一市に散らばる九百十四の集落の住民十六万七千人は陸路もなく、陸の孤島に閉じ込められている。
 唯一の頼みの綱は空の便だが、滑走路のないこの地区はヘリコプターしか着陸できない。この地区の軍隊には大型輸送ヘリコプターが二機しかなく、ために同州政府は民間から五機をチャーターして物資補給を始めたが、被害地が広範囲のため作業ははかどっていない。州政府は伝染病予防のための医療品支給に二五〇万レアルの緊急補正予算を承認した。連邦政府も空輸用の燃料費として一〇〇万レアルの支給を決めた。
 一カ月以上も続いた異常乾燥のため農作物は壊滅状態で、とくに主食で収入源ともなっているマンジョッカ(キャッサバ)が全滅したことで、農民らは食事にも事欠き、収入が途絶えたため日用品も買えないでいる。
 干上がった川には酸素欠乏で死んだ無数の魚が川底を埋めて異臭を放ち、はげ鷹などの野鳥が群がっている。漁師たちはわずかな水がある上流に三時間歩いて川魚の漁に出かけている。一日にせいぜい十数匹しか取れず、近所で分け合って食糧としている。これらの魚も酸欠で腐敗した魚の中を泳ぎ回っていることから、病気に汚染されているリスクがある。
 中でも最も深刻な事態とみられるマナキリ市(マナウス市から六五キロ)では食糧のほか飲料水も底をついている。住民らは泥水化したわずかな川水をすくって飲んでいる。このため子供らは下痢や腹痛に見舞われているが、薬局では薬が底をついて手の施しようがない有様だ。また住民ほぼ全員がかかっているといわれるマラリアの治療薬は、五人分の在庫しかないという。
 アマゾン地方では一カ月後に冬場となり雨季が到来するが、緊急支援がなければ雨季が来る前に多数の死者が出ると見られている。七十歳のある男性は、これまで一九六三年と九八年にエルニーニョ現象で飢餓に見舞われたが、今年は比較にならない位の史上空前の飢餓だと述懐している。
 同州の保安局長官は十五日、空から同地を視察したが、たまたま通り雨に遭遇した。しかし雨は土中に浸み込む前に地上の熱気で蒸発し、まるで火事のような煙が一面にまん延したという。少々の雨では効果がないことを思い知らされた。同長官は同市に複数の井戸を掘ることを命じるとともに、消毒用のクロール水を補給するよう手配した。サンパウロ州でもNGOや学生が物資を募っている。

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