山崎千津薫監督の『GAIJIN2』には、勝ち組テロに巻き込まれ、ピストルで撃たれて死にそうな夫の横で、妻が出産するシーンがあった。これを見たとき、あまりにもどぎついなと思った。「生と死は隣り合わせ」という分かりやすい表現だが洗練が足りないと感じた▼この仕事をするようになってから、葬式に出席する機会が格段に増えた。先週末、知人の葬儀に参列した。サ紙の記者だった。同い歳だったせいもあり、平素は感情に淡白なことを自認するが、今回だけはちょっとこたえた▼日本では棺おけはただの長方形の箱を使い、最初からフタが閉じられ、通常はのぞき窓から死に顔がちょっと見えるだけだ。しかし、こちらのはフタが開いており全身が見える。さらに遺体の手を握ったり、顔を撫ぜたりする人が多い。最初の頃はそれを見てギョッとした▼日本では「死」は「けがれ」につながるとの発想からか触ることはめったにない。だが、こちらではもっと親しみのあるもののようだ。「遺体」というよりは「冷たくなった本人」という雰囲気か。また、聖書を読んだり賛美歌を歌ったりすると、彼が無事に仏教の「楽土」に往けるのだろうかと妙な心配をしてしまう▼葬儀から自宅に帰ると、ブラジル人の友人宅で子どもが生まれたという。「今朝、おしっこをしようとトイレにいったら子どもが出てきた」とか。この国では死が身近だが、その分、簡単に生まれもする。ふと、千津薫の描きたかったものは、これかも知れないと思った。 (深)
05/10/19