2005年10月26日(水)
サンパウロ国際映画祭で上映される日比NPO協働制作劇映画『アボン・小さい家、地球で生きるために』(百三十分 英語・フィリピン語/ポ語字幕)は、日系フィリピン人の歴史を描いた話題作だ。
約百年前、道路建設などに従事する日本人デカセギ労働者がフィリピンに渡り、住み着いた。その子孫は第二次大戦中に米軍と旧日本軍兵士双方からスパイ扱いされた。戦時中の日本軍の扱いが酷かったことから、終戦後はフィリピン人から虐待されるなど熾烈な経験をしてきた。
そのためルソン島北部山岳地帯バギオ市の日系人たちは、一九七五年ごろまでの三十年間も山中に隠れ住んでいた。そこへ日本から来たフランシスコ会のシスター海野が説得に行き、町に連れ戻した。市内にはアボン(小さい家)という日系人会がある。そこでの様子を描いたコメディータッチの劇映画だ。
二十六日に来伯予定の今泉光司監督(東京都)はメールで、「どうか私たちの新しい試み、NPO(民間非営利組織)が市民と協働で途上国の地方から発信する劇映画をご覧いただき、ご支援くださいますようお頼みいたします。中学生からお年寄りまで、アジア歴史不思議の物語、第三世界シリアス・コメデイー劇映画、ご来場をお待ちしております」と説明する。
映画評論家、村山匡一郎さんは次のように解説する。「自然と共生して暮らすイゴロット〈山の民〉の豊かな生活と、そこから町へ出た日系フィリピン人の家族の貧しさと悲しさ。その彼らの生活と家族の絆をやさしい視線で包んで描きながら、映画は風刺のきいた寓話的な世界を見事に築き上げている」。
上映はサンパウロ市内で三回。▽CINECLUBE VITRINE 1(二十七日午後九時四十分)▽CENTRO CULTURAL SAO PAULO(二十九日午後八時十分)▽MIS(十一月一日午後四時)