2005年10月27日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】二十三日に実施された銃器と弾薬の販売禁止の是非を問う国民投票は類を見なかっただけに、世界中の注目を浴びた。禁止反対派が圧勝したことは海外で驚きをもって迎えられたが、この背景に政府の治安対策に不備があることが浮き彫りとなった。
これを受けて国連人権擁護委員会は、二十六日からスイスのジュネーブの本部で開かれる委員会で、これをテーマとすることを発表した。国連では国民投票の結果は政府への不信感の表われとの見解を示し、委員会では人権擁護の立場から箇条書にした文書を提出、政府の対策を追及する方針を固めている。
国連では一九九二年に憲章を定め、加盟各国はもとよりブラジルも批准している。それによると、政府は五年毎に治安の状況を報告した上で、それに基づく対策や防犯の趣意書の提出を義務付けている。しかるにブラジル政府は二〇〇〇年に提出するべき報告書の提出を怠り、今年になって五年遅れで提出した。憲章違反で委員会は心証を害している。
その間、ブラジルで活動しているNGO(非政府団体)の年次報告で、ブラジルの治安対策は「絵に描いた餅」との報告を受けていたことも態度を硬化させた原因となった。
同委員会がテーマとして取上げる意向の主な点は、一、治安に関しこれまで提出された国家プランが実行に移されていない、二、今年三月にリオデジャネイロ市で発生した二十九人の集団無差別殺人と、パラー州で二月に起きたアメリカ人宣教師殺害事件は何ら解明されず、対策も講じられていない。三、過去十年間にバイア州サルバドル市で児童九百四十八人が殺害されている件、四、パラナ州人権擁護連盟が、政府がプランや予算を設定しながら一向に実施していないと非難する声明を発表した件。同委員会に出席するブラジル代表は、国家プランを実施する前にそれを超えた犯罪が多発しているとし、司法や立法の壁もあると苦しい弁解をしている。
これを受けてパロッシ財務相は、世論の批判を真しに受止めて治安対策の予算の交付を早急に行うとの所信を表明した。いっぽう政府内の治安関係者は悪徳警官を排除して警官の質を向上させるのが先決だとし、その一方で早急な治安対策は望めないだろうとの見方を示した。