ブラジルは犯罪が多い。「誘拐産業」と呼ばれる言葉までが生まれ、とりわけ銃器犯罪が多発している。昨年の拳銃による死者は3万6千人余と世界最悪を記録しているし、暴力が町を支配している。リオやサンパウロ市民は銃による暴力に困惑しながらも、静かで平穏な暮らしを求め「平和行進」を繰り広げたりしているのだが、日々の暮らしは暗く陰鬱な影が付き纏う▼風光明媚を誇る観光都市リオは今や強盗や殺人が横行する暴力都市に変貌してしまった。フアヴェ―ラに巣くう麻薬組織は機関銃や手りゅう弾までも所有して警官隊とも対峙する。この凄まじいばかりの悲劇から脱出したいと拳銃などの買い取りを勧める「銃器追放キャンペーン」を展開しかなりの成果をあげ、市民らに「平和の尊さ」を訴えることにも成功した▼こうした世情を背景に「銃器販売禁止」を求める国民投票だったのに―市民らが選んだのは「銃は必要」であった。ブラジルを「武器のない国」と頑張ったバストス法相もさすがにショックを隠し切れないようだが、ここは国民の声を無視することもできない。世界で初めてとされる今回の国民投票運動が始まったときは、禁止派が圧倒的に多い。が、後半戦には反対派が優勢になる▼庶民感情としては「銃器の販売禁止によって喜ぶのは犯罪者だけ」の意識だけが高まったのかもしれない。安穏な日々に「刀狩り」は大切なのだろうが、国民の手にある推定1700万丁の銃器をどうするのか―と、拳銃販売の禁止は意外と難しいものらしい。(遯)
05/10/27