2005年10月28日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十七日】二〇〇二年一月に当時サンパウロ州サント・アンドレ市のセルソ・ダニエル市長が殺害された事件に絡む同市の労働者党(PT)不正資金を調査している議会調査委員会(CPI)は二十六日、ルーラ大統領秘書室長のジルベルト・カルヴァーリョ氏と元市長の兄弟二人を証人喚問した。兄弟らは秘書室長を不正資金調達の張本人として告発していたもので、委員会での直接対決となった。秘書室長は当時、同市の補佐官を務めていた。同委員会で前日に証言したサンパウロ州判事も、捜査の段階で連警が提出した通話記録により、秘書室長が不正に絡んでいた可能性があると証言しており、直接対決が注目されていた。両者の主張は平行線をたどり、結局はシロクロがつかなかった。成行きを心配していた大統領は秘書室長の受け答えに満足し、安心したとの態度を表明した。
委員会に出頭した双方は冒頭から興奮ぎみで、語気荒く応酬を交した。またPT党員である秘書室長に委員会メンバーの野党議員から反論が飛び出すなど、会場は騒然とした雰囲気に包まれた。同委員会はビンゴCPIと呼ばれ、サント・アンドレ市を中心としたPTの不正資金の流れを追及している。
殺害された元市長は、当初は強盗説が有力となり、その後市内での賄賂にまつわる政争が原因として、捜査当局は一度捜査を打ち切った。その後PTのメンサロン(裏金)疑惑と呼ばれる党ぐるみの大がかりな不正資金が明るみに出て、渦中の人物のジルセウ前官房長官に追及の手が伸びたことで、元市長殺害と同市の不正資金調達が改めて見直された。当時ジルセウ前長官はPT総裁だったことから、同市も一連の不正に関与しているとの疑いが強まった。
委員会に出頭した元市長の兄弟は以前から、元市長は不正の口封じのために殺害されたと主張し、不正の存在を告発していた。委員会で兄弟は冒頭、秘書室長が不正資金をジルセウ総裁(当時)の元に運んでいたと証言し、秘書室長に「忘れたのか?」と詰問した。二人は、元市長の初七日のミサに秘書室長が現れ、不正資金一二〇万レアルをサンパウロ市在住のジルセウ総裁の元に届けたと言い、こういう「ヤバイ仕事」はしたくないと語ったと証言した。
これに対し秘書室長は事実無根だとし、兄弟らは野党のお膳立した政争の材料に使われているだけで、不正資金にたずさわったことはないと繰り返し主張した。この発言に委員会メンバーの野党議員が反発し、騒然となった。兄弟らはあくまでも秘書室長を不正資金の調達の張本人だとし、「道化芝居」だと決め付けたため、この発言をめぐって言い争いが続いた。結局両者の主張は平行線をたどり、八時間に及ぶ論争は決着がつかなかった。
ルーラ大統領は執務の間にテレビ中継を見て、秘書室長の落ち着いた主張に満足の意を表し、「安心した」とコメントした。しかし、右腕とされたジルセウ官房長官が議員権はく奪の裁きを受けるのが確定的となり、今度は秘書室長という側近が疑惑の俎上となったことで、さらに立場が苦しくなったことは否めない。
前日の同委員会でロッシャ・マット判事(複数の容疑者に便宜を与えたとして背任罪で逮捕済)が、元市長殺害の捜査で連警が盗聴した通話記録によれば秘書室長の嫌疑は明らかだと証言したのを受けて、連警では改めて通話のテープをもとに捜査を進めることを明らかにした。