2005年10月28日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十七日】集中豪雨のシーズンを控えてサンパウロ市当局は、例年多発する地滑りや洪水の対策に追われている。被害のほとんどがファベーラ(スラム街)内で当局が危険地域を指定しているにもかかわらず、不法住居者が増えて対策が追いつかない状態となっている。中には地滑りで家屋が土中に埋り一家が全員死亡した跡地を整地して、当局の警告を無視して新バラックを建て、移り住む家族もいる。
市当局の発表によると、市内には三万六千家族十八万人が、市が指定した危険地区に居住している。これらのほとんどが市中の二百二十カ所のファベーラにあり、危険箇所は五百六十二カ所に及んでいる。このうち三百十五カ所はランクの中でも危険あるいは最も危険の部類に属し、少量の降雨でも災害が起きやすい可能性がある。
市では災害対策のため昨年より二〇〇万レアル上回る今年の予算一〇〇〇万レアルを計上し、整備を進めている。最も危険な地区の八百八十七世帯は安全と見られる場所に移動させたが、残りも補助金を与えて移動させる意向だ。またこれまでに災害が多発する六十四カ所のファベーラの川の整備や雨水の排水溝、洪水の原因となるゴミの清掃を行ってきたが、これは全体の二〇%しか過ぎず早急な作業が求められている。
最も危険な地区に指定されている東部ジャルジン・アウロラ区のタトゥー地区では地盤がゆるみ地滑りが発生し易く、これまでに幾多の犠牲者を出している。
地形が急斜面で高台から下の家が丸見えで、一度地滑りが起きると数軒が埋ってしまう。地区代表の住民は危険を承知で住みついたにもかかわらず、市当局の整備に強い不満を抱いている。タトゥー(アルマジロ)の名前の由来は不明だが、斜面にバラックを建てた住人は、怖くないとして「ここはタトゥーだ。タトゥーは土中に穴を作って住むので、土砂崩れを怖れては名前に恥じる」と洒落ている。