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広がる「ファット運動」=劣等感捨て、社会の表舞台へ

2005年10月28日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十三日】女性がこの世にいる限りダイエット産業は衰退しないと言われるほど女性の美への探求は尽きない。こうした中、生まれながらの肥満タイプは人一倍涙ぐましいダイエットに励んで一時的に成功しても、短期間で元の体型に戻るケースが多い。こうした人々はコンプレックスに見舞われ、人生の裏街道を歩んできた経験を持っている。しかし豊食時代を迎え年々肥満タイプが増加してきたことで、コンプレックスをかなぐり棄てて社会に堂々と参加する、いわゆる「ファット(肥満)運動」の輪が広まっている。
 ブラジル地理統計院の調査でも国民の肥満タイプに対する偏見と差別、不当な扱いが証明されている。同調査によると、現在規定の目安とされる体重をオーバーしている人らは全人口の四〇・六%に相当する三八六〇万人に達し、このうち肥満タイプは一〇五〇万人で、平均体重より四〇キロ以上もオーバーしている「病的肥満」は二〇〇万人とのこと。一九七五年ではこの数は男性が一八・六%、女性が二八・六%だった。
 ファット運動は、肥満グループが立ち上げたインターネットのサイト「クリエートLL(キングサイズの意)」で始まった。サイトは六年前に「ブラジルで初めての肥満者向雑誌」のタイトルで始まり、現在加入者は三六〇〇人となっている。
 サイトには肥満に関するあらゆる記事が掲載され、職業斡旋も行われている。その一環でモデル斡旋も開業し、現在百人が登録されている。前述のように肥満タイプが急増しているのをファッション界が見逃す訳がなく、これらモデルも多忙を極めている。ただ難点はスマートなモデルより出演料が六〇%割安なことだ。今後この格差を是正するのが課題だという。
 洋品店でもキングサイズ専門店が盛況を見せている。サンパウロ市内では十店を数え、それぞれ複数の支店を抱えている。一九九〇年代は一部のコーナーにしか過ぎず、客も周りの目をはばかりながら品物を物色していたが、現在は堂々と入店して五十四番から五十八番のサイズ物を購入していくという。好みも従来の黒色系は敬遠され、流行に沿った物を要求するため、各店では毎年デザイナーをニューヨークに派遣して流行の先取りを行っている。
 職場で侮辱されても泣き寝入りはしなくなった。百四十キロの体重の女性は上司から常にデブ呼ばわりされ、二階下の他の課への書類運搬を日課とされ、エレベーターの使用を禁止されていた。仕事を命じる時、全員に聞こえよがしに「やせるための運動」として階段を使用することを義務づけた。これに対し労働裁判所に訴えたところ、裁判長は申立てを全面的に認め、差別待遇だとして上司に八〇〇〇レアルの罰金を科した。以後この女性は求人応募の際、履歴書に必ず体重を明記しているという。
 インターネットでのファット運動も広がり「肥満をこよなく愛する会」は四千八百十五人が加入しており、「ファチトゥデ」は千百四十八人「ゴルジーニャ愛好会」は三千九百四十五人の会員を誇り、コミュニュケーションを活発にしている。