2005年11月4日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】亜国マル・デル・プラッタ市で開催される米州首脳会議への出席に先立ち、ブッシュ米大統領は二日、ルーラ大統領は政治手腕が力強く、南米諸国民主化の指導者にふさわしいと評価し、伯米両国の関係は多数の関係者にとって驚異の的になると記者団に述べた。米大統領発言は、大衆迎合路線を採るチャベス大統領やカストロ議長への牽制球とみられる。一方、大統領府は同評価発言が、党内左派や外務省に無用な刺激を与えないかと困惑している。米大統領のブラジル公式訪問が行われる五日まで、大統領府は沈黙を守ることにした。
米大統領は、米州で独自路線を堅持するルーラ大統領の政治姿勢を賞賛した。ベネズエラのチャベス大統領やキューバのカストロ議長が大衆迎合路線を吹聴していることで、ルーラ大統領に歯止め役を期待したようだ。伯米大統領は政治的に立場を異にするが、同一目的と同一価値観の共有者であり、役割分担を米大統領が提唱した。
報道機関の中には両国関係に水を差すものもあるが、ブラジルが偉大なる国家であることを米政府は認識しているとした。ルーラ大統領は、チャベス大統領やカストロ議長、ボリビアのエヴォ・モラーレス大統領の類ではないと米大統領は語った。
米州自由貿易圏(FTAA)の頓挫は承知しているが、米州に限らず国際貿易の促進を図るドーハ・ラウンドが優先事項として先行し、FTAAに風穴を開けると米大統領はみている。ドーハ・ラウンドにおけるブラジルの立回りは注目に値した。欧米を始め世界の主要国がブラジルの外交手腕を見直したという。
一方ルーラ大統領は、米大統領の評価発言に戸惑いを感じながら米州首脳会議へ赴いた。米大統領発言はブラジル政府の対キューバやベネズエラ、ボリビア外交にくさびを打ち込むものだと外務省が反応した。労働者党(PT)内左派は、米大統領の同一価値観に異を唱えた。米大統領は帝国主義者の亡霊だという。
ワグネル憲政相は、同発言を前向きに捉えた。五日の公式訪問を控えた米政府の目から見たブラジルの重要性と位置付け、ルーラ大統領の国際的役割が明白になると期待している。
大統領府にとって心配のタネは、米大統領の公式訪問時に敢行される党内左派の指揮による統一労組(CUT)を始め農地占拠運動(MST)、全国学生連盟(UNE)などの大規模抗議デモだ。抗議デモは、連邦令が認める範囲で行われるので弾圧する理由はない。六日のブラジリアは反米気運の嵐の中で、米大統領の歓迎ムードを盛り上げねばならない破目になる。
議会の米大統領発言に対する反応は複雑だ。特に中東政策では意見が大きく隔たる。伯米両国は同盟国ではあるが、同時にライバル国であり、基本的立場も全く異なる。米国は民主主義の押し売り国であり、ブラジルは平和の伝統を重んじる国である。ブラジル社会民主党(PSDB)のヴィルジーリオ上議は、両大統領は好戦的な性格で共通するという。米大統領はイラクと戦い、伯大統領は国民と戦っていると皮肉った。