2005年11月4日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三十日】一向に衰えを見せない密輸品に太刀打ちできず、国内業界は深刻な状態に陥っている。密輸の目玉とされる家電製品や音響装置は、従来は「安かろう、悪かろう」が通り相場だったが、今や高性能の新製品が続々登場して市場を我物顔で独占している。家電や小型音響製品の生産業界は競合できずに生産中止を申し合わせた。姿を消した工場が多い中、玩具業界も中南米で唯一生産を続行しているものの、灯が消えるのは時間の問題とされている、連警は今年九月までに密輸品三億六〇〇〇万レアル相当を押収したが、これは昨年の三〇%増となっている。
今年で国内生産を中止した家電や小型音響製品はこれまで平均六二%が密輸品(ポータブルラジオは八〇%)で、残り三八%が正規の輸入品と国産品で分かち合っていた。しかし来年には一〇〇%が密輸品にとって代わるとみられ、国産メーカーは生産中止を申し合わせた。生産中止になったのはCDプレイヤー、ラジカセ、ラジオ時計などで一〇〇億レアルの市場の四%に相当する。
メーカーは社員の解雇を避けるため生産中止部門を正規輸入に替える意向と示しているが、販売価格が五〇%割安の密輸品に対抗するには減税が必至だとしている。現在この部門では四億レアルの売上が想定されており、このうち二億五〇〇〇万レアルが密輸品で、正規輸入品一億五〇〇〇万レアルとされている。政府の税収は正規の輸入品のみで徴収されるため、一億二五〇〇万レアル相当となっている。これが来年は五億レアル市場になるも、一〇〇%密輸品に独占されるため税収はゼロに転落する。
このためメーカーらは正規輸入品で密輸に対抗するには、輸入品の工景製品税(IPI)の現行二〇%から三〇%、輸入税の二〇%を二%、さらに商品サービス流通税(ICMS)を一八%から一二%に引き下げるよう要求している。これでも税収は一〇〇〇万レアルを超え、政府にとってもメリットはあると強調している。
玩具業界では過去三年間で三十一工場が閉鎖の憂き目にあい、失業者一万二百人を出している。すべて中国産のオモチャに押されたもので、中南米諸国では軒並み国内生産を中止した中で、ブラジルは四八%の低いシェアの中で唯一生産を続行している。しかし他国同様、完全閉鎖は時間の問題とみられている。
衣料品などの繊維製品も例外ではなく、中国がブラジル向けに二七〇〇トンを輸出と公表しているにもかかわらず、輸入統計ではわずか九〇〇トンとなっている。残りは密輸あるいはアンダーインボイスだ。これにより信じられないような安値の製品が市場に出回ることになる。
連警の密輸取締課が、今年一月から九月までに押収した密輸品は三億六〇〇〇万レアルとなり、昨年の三〇%増となった。パラグアイとの国境の町のフォス・ド・イグアス市のみで四二九〇万レアルだった。同市での九月の押収は七〇〇万レアルと単月で史上最高で、昨年の同月(二八〇万レアル)比で二倍半強となった。連警ではさらに百五十人の取締官を増員して防犯を強化する体制を敷いている。