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扶助金よりもチャンス=縮まらない所得格差=税制と教育制度の改革を=上流階級の特権なくせ

2005年11月9日(水)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙九月二十一日】国際復興開発銀行(BIRD・別名世界銀行)は二十日、所得格差が益々拡大するブラジル社会の不名誉なメカニズムを公表した。報告書は同メカニズムを「不公平な罠」と題した。ブラジルは所得格差で南米のチャンピオンだし、所得格差を拡大する数々の材料が揃った国とした。ブラジルの歴史は、貧乏人が金持ちになれない社会制度を代々作りあげ、定着させてきたという。
 ちなみに所得格差が世界で最も小さく、社会主義が理想的に結実した国は日本と評価している。BIRDは所得と収入に限らず、貧富の差別などを視野に入れた金融制度や行政制度、司法制度、警察制度、公共サービスや保健、教育を評価し、ブラジルでは貧乏人にチャンスが与えられていないと結論付けた。
 生活扶助制度は前政権が始め、現政権が発展させたが、問題の本質を理解していないと糾弾した。貧乏人が必要とするのは、扶助金配布よりもチャンスの配布であると世銀報告書はいう。チャンスについては家庭に根ざす差別が四つある。人種差別、出身地の差別、両親の学歴による差別、父親の職業による差別。この四つが原因で教育の機会も制限される。
 所得格差を解消出来ないブラジルの決定的悩みは、上流階級が政治と経済で特権階級を形成し、君臨していること。金融制度と法律制度を上流階級が私物化、美味しい部分を独り占めにし、下層階級は蚊帳の外に置く。
 昔からあることだが、議員と裁判官の給料は、情勢の如何にかかわらず自分たちで勝手に昇給を決める。特権階級の法外な年金制度に手を加えようものなら猛烈に抵抗する。これが、ブラジルを貧富の格差で世界最悪にした原因だ。
 金融システムでは、貧乏人がどんなに素晴らしいアイデアを持っていても、銀行は相手にしない。良いアイデアが資金的チャンスを得られるのは、親が金持ちであること。BIRDは貧乏人に発展のチャンスを与えるために、二つの制度の整備を求めている。
 一は投資を歓迎し、貧乏人を支援する雰囲気があること。これが国家発展の原動力になり、所得の分配につながる。二は安定した経済成長を持続すること。現状では、時代の読みに長け、情報が豊富で横の連絡網が密な上流階級だけが、所得を分配している。
 ブラジルは貧富の差別の他に悪習がある。貧乏人に挨拶されるのも迷惑だ。貧乏人が家の前を通ると、ツキを盗まれる。貧乏人は厄病神で、付き合うと運が衰える。貧乏人は貧しくする雰囲気を持っている。貧乏人は貧乏人の知恵を持ち、哀れむに足らない。
 ブラジルの税制も、貧乏人をより貧しくする。重税を払っても採算が取れるためには、高度の生産技術と経営技術が要求される。これには、財政力に裏打ちされた組織力と情報力が必要だ。これがブラジルの起業環境といえる。
 経済の一%成長は、下層階級の減少率四%に比例する。ブラジルの貧富を増長したものに、教育制度と大学制度がある。ブラジルの出世スタイルは、小中学校を私立の名門に学び、一流大学へ行くこと。政府の教育予算も、その方向で使っている。下層階級の人材発掘には全く投資していない。