2005年11月9日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙九月三十日】他人の金をいじる人は徹底したケチでないと道を誤る。気前のいい銀行頭取は早晩業界から追放される。それが事実なら、中央銀行の理事らは慎重という十字架を背負って暮らすと経済評論家のセウソ・ミング氏は言う。
二十九日に中銀が発表したインフレ報告書は、この類のことばで満ちている。ここから推理すると来る数カ月、基本金利は画期的に引き下げられる可能性がある。経済予測は三カ月毎に分析され、中銀の考えを追記している。
産業界がダンスパーティなら、中銀は交響楽団だ。事業家は音楽に合わせ、楽しく腰を振りながら踊る。強気の事業家はインフレを五・一%以下と踏んで、製品の値上げをしない。値上げをしようものなら、多量の在庫を抱え、資金繰りに窮することは目に見えている。
報告書の要旨は、基本金利の行方である。利率の設定次第で、資産は自然増殖するか蒸発する。ここに悲喜劇が生じる。報告書の結論は、インフレが御者に手綱を取られた馬車馬のように大人しくなったという。
中銀は控え目に金利政策で行き過ぎがあったことを認めた。金利が一九・五%の時点でドルが二・四〇レアルであった。それが二・二一レアルとなったのだから、当然金利は急降下が予想される。
中銀の保守的見方では国際経済が好調で、ブラジルの国内総生産(GDP)、対外収支、経済ファンダメンタルズともに順調である。同じ中銀でも別の見方がある。国内にだぶついたドルがインフレ抑制に手伝ったというが、決定的だったのは中銀の金利政策だという。
中銀の金利政策は、抗生物質の効果よりも魔法使いの呪文のように効いたという。またレアル通貨の高騰は、外資の流入ではなく輸出がもたらしたと中銀はみている。
二〇〇五年一月から八月までの貿易黒字は二八三億ドルに上った。金融市場の外資出入高は四三億ドルの赤字であった。これで高金利による外資導入とドル安説は根拠がないことになる。
中銀は今回、インフレを起こさず消費を拡大したことで見るべき成長があったという表現を避けた。今回はインフレを見守るかかしを取り払っての現象である。中銀はこれを機にさらなる経済成長の賭けに出ると思われる。