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コラム 樹海

 元邦字紙記者で、現在日本で活躍するノンフィクション作家、高橋幸春さんの投稿「『円売り伝説の虚実』は本当か」にには、読者からいろいろ反応があった。いまだ根強い、勝ち負け抗争への関心をうかがわせる▼戦後六十年たち、直接の当事者は鬼籍に入った。とはいえ、まだまだ語られていない歴史証言はたくさんある。「自分の父親が勝ち組だった」という声をよく聞く。「本当の歴史を残してほしい。臣道連盟はけっして悪者ではない。殺人行為をした特攻隊は臣道連盟の一部ではない」とも▼ニセ宮、円売り、南洋の土地売り詐欺、戦勝宣伝、テロなど一連の勝ち負け抗争はなぜ起きたのか。当事者にすれば、恥や罪であったかもしれない事々だ。当時の中心人物以外は本当の経緯を誰もしらない。大概のことは噂話として出回るのに、この件に関しては、なぜか徹底して緘口令がしかれ、秘密が保たれた▼半世紀以上たった現在、同時代人ゆえに感じる生臭さは消え、その印象の強さゆえにミステリアス(不思議な)魅力すら放っていると私は思う。むしろ、ブラジル日系社会は「伝説」を作ったとはいえないか。他に類をみない豊かな歴史物語がそこにある。だからNHKドラマ『ハルとナツ』や映画『GAIJIN2』などでも大きく扱われた。後世になるほど人々はそう思うに違いない▼今、この歴史は日系社会の恥ではない。より真実に近い、豊かな細部を残すべきだ。そのための貴重な証言がもっとあってもいい。可能な方はぜひ、編集部まで連絡を。(深)

05/11/17