2005年11月23日(水)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十二日】ルーラ大統領は、辞任の意を固めた財務相に対し二十一日、はなむけの言葉として在任中の功績を絶賛した。式典に臨んだ大統領は、予算交付を巡って正面衝突したロウセフ官房長官など閣僚や議員、財界人などを前に財務相の留任は誰も慮ることだが、次期選挙のため財政黒字の緩和は拠所ないことだとした。破局の淵にあった経済を立て直し、根拠のない告発で惹起された政治危機の中でも雇用を創出して国内総生産(GDP)を盛り上げ、堅実に経済を前進させたパロッシ財務相の功績と考え方は不変であるとした。
ロウセフ・パロッシ一騎打ちの矛先を大統領が治めたものの、財務相の心中は穏やかならざるものがあるようだ。財務相の辞意表明は十七日。大統領は再々引き止めを試みた。メイレーレス中央銀行総裁も立会い二十二日夜、最終判断に至る。
財務相は、留任に白紙委任の条件付を求めた。連日マスコミで報道される閣僚と労働者党(PT)幹部による財務相批判の大合唱を封じ、経済政策に口を出させないことを財務相が大統領に要求した。財務相によれば、二十一日の大統領発言「経済政策は政府の責任であって、財務相の責任ではない」に不満だというのだ。
大統領は十七日、財務相の辞意を退け、ラジオでその功績を称えた。官房長官が同日午後、財務相を酷評する記者会見を行った。大統領は経済政策に変更はないと一方で宣言し、他方では財政黒字を加減するよう官房長官に指示する二枚舌を使った。財務相は大統領によってはしごを取り払われた感じだというのだ。
公共債務の金利支払いのため、一月から九月までにGDPの六・一%に当たる財政黒字を捻出した。これは血のにじむような努力であった。財務相は引き締めを緩和しても、五%に抑える考えであった。それを四・二五%に緩めると、これまでの努力は水の泡になる。
財務省は選挙前夜である今年末に、大統領と官房長官の圧力に抗して年度末収支を四・六%の黒字で締めようとしている。財務相は大統領に経常収支の背景を単刀直入に説明した。同相が三年間をかけて築きあげた国際信用はいま崩壊しようとしていると。
財務相にしてみれば、これまでの努力を無にされて留任する理由がない。ブラジル経済の重責を預かった者として、一献の悔いを残す。大統領が予算編成で帳尻を合わせるといとも簡単に言うのを恨んだ。財政には高金利政策のツケが重く圧し掛かり、表ざたに出来ない面があるらしい。
財務相は省庁予算を充分支給したという。省庁が何もできないのは省庁幹部が無能だからで、予算不足を理由に責任逃れをする卑怯者の弁だとした。財務相と官房長官が並んで出席する二十一日の閣議は、財務相の血圧が下がり中止となった。
ベルナルド予算管理相は、両者の論争は夫婦喧嘩みたいなもので、熱が冷めるのを待つしかないという。サンパウロ州工連(FIESP)のスカフ会長が、問題は財務相の交代ではなく政策変更の有無だと述べた。