2005年11月25日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】第3・四半期の国内総生産(GDP)が前期比でマイナス〇・五%へと低下したにもかかわらず、中央銀行の通貨政策委員会(COPOM)は二十三日、基本金利をわずか〇・五ポイント引き下げ、年一八・五%と決定した。市場関係者がインフレ鎮静とレアル通貨の過大評価を理由に、基本金利の大幅切り下げを求めたが無視された。COPOMは二〇〇五年の経済成長率を三%以下と推定。当四半期のマイナス成長は財務相の去就が原因とした。公共債務の累計は三十日、ブラジル地理統計院(IBGE)が発表するが、十月に九三七三億レアルに達する見込み。
COPOMは満場一致で市場の完全掌握を優先し、実質金利一三・一%という世界一の金利水準を保つことに同意した。通貨政策の柔軟性が九月以来叫ばれ、市場関係者は〇・七五ポイントの引き下げを期待したが、聞き入れられなかった。
国際金融市場で通貨の流通量が増加するいま、無為無策の通貨政策を継続するなら、レアル通貨は対ドルで二・二〇レアルを割ると市場関係者は見ている。景気低迷の中、産業の足かせとなっている高金利とレアル高に何ら手が打てない中銀の優柔不断を非難する大合唱が始まった。レアル高抑制には金利の引き下げしかないというのだ。
高金利政策のツケは他にもある。一月から十月までに発行された国債は、一二七一億レアル。累計で国債総額は九三七三億レアルに上った。基本金利を引き下げたものの、十月だけで公共債務の金利は一一〇億レアルとなった。公共債務の増加率は横ばいとはいえ、総額でジワジワと増えている。ブラジル経済のやりくり算段は深刻化している。
サンパウロ州工連(FIESP)のスカフ会長は、〇・五ポイントの金利引き下げを「ふざけている」と憤った。国際市場の白刃の下で生きている産業人と、インフレしか頭にない中銀の考え方の間には深遠の溝があるとした。全国工業連盟(CNI)のモンテイロ会長は、世界の経済成長率が四・五%といわれる中、なぜブラジルが三%以下で足踏みするのかと訴えた。中銀は臆病者だという。
金融コンサルタントMBのバエル氏は、現実無視の通貨政策がGDPマイナス成長となって現実化したと分析した。これは対策が常に後手であることを意味している。基本金利の引き下げは政治危機の起こる前、世界の景気が好調であった一月がチャンスであった。現在は政治が不安定で海外の景気動向は秋の空、金利引き下げの時期を中銀が読み違えたと見る。
現状では政治的圧力でもないかぎり、金利の大幅切り下げは困難。財務相の首が辛うじてつながった程度で、COPOMの立場は微妙である。インフレ抑制法には高金利政策ばかりでなく、財政政策もあった。緊縮財政即財政黒字ではない。しかし、政府は予算のバラまきとムダ使いをした。放縦政策のツケが今回ってきたのだと、同コンサルタントがいう。