2005年11月25日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】ブラジル国内の白人と黒人(黒人との混血を含む)の生活と地位の格差が広まる一方で、この差別の改善がされない限り、世界の国民地位の目安とされている人間開発指数(HDI)の向上は望めず、ブラジルは低開発国並みの水準に甘えることになると指摘されている。十一月二十日の「黒人意識の日」にちなんで国連が過去の統計をとりまとめて黒人白書として発表したもので、白人と黒人の断層が浮き彫りとなった。国連筋は、奴隷開放時の国の無策が差別を拡大する原因になったとみている。
国連が査定するHDIでブラジルは二〇〇二年に指数〇・七六六と、世界百七十七カ国中七十三位に位置づけた。この指数は所得、出産時点での将来の希望度、教育水準の三点を骨子とした生活水準をはじき出すもの。
ブラジルを仮に白人のみと黒人のみの二つの国に分けた場合、白人のみの指数は〇・八一四となり、世界ランキング四十四位となる。これはヨーロッパの中堅国であるブルガリアとリトアニアと同水準だ。片や黒人のみの指数は〇・七〇三、世界の百四番目に位置し、白人社会とは六十位の格差がつき、世界でも貧困国といわれるベトナムとボリビアに肩を並べる結果となった。
指数は州別でも格差を見せている。ブラジリア連邦直轄区の黒人は世界ランクの三十三位とチェコと同様の高水準を見せ、アラゴアス州のそれは百二十二位とナミビア並みの低水準となった。
黒人白書によると、ブラジルの総人口のうち白人が五三・七%に対し、黒人は四四・七%、その他が一・六%となっている。人口の一〇%を占める最低貧困層の七〇%は黒人で、逆に一〇%の富裕層に黒人の占める割合はわずか一六%に過ぎない。
家政婦は白人が一三・八%に対し黒人は二四・二%。十八歳から二十四歳までの年代で大学就学者は白人が一一・七%に対し、黒人は二・五%となっている。またリオ警察が射殺した人間は黒人が七二%、白人が二六・二%となり、犯罪も黒人が圧倒的に多い。
いっぽうで、七五・五〇レアル以下の月収の貧困層が一九九二年から二〇〇一年かけて五〇〇万人減少したのに反し、黒人のそれは五〇万人増加した。それにとどまらず失業が増え、平均以下の給料所得者も増加している。
この傾向を国連関係者は「奴隷時代の遺物」と指摘している。教育についても同様で、黒人子弟の就学期間は白人よりも二・一年短く、教員のレベルが低い地域に偏っていることから、学力の質もかなり劣ることが報告されている。
全国で黒人の生活水準が最も高いのがサンパウロ州サン・カエターノ市で、全国の黒人平均所得の目安一六九レアルに対し四七五レアルとなっている。同市での黒人のHDIは全国トップの〇・八三三となっている。白人のそれは〇・九〇二、市の平均は〇・九一九で無論全国一を誇っている。逆に最低はアラゴアス州トライプ市で、黒人の平均月収は三十レアル、HDIは〇・四九三となっている。
サン・カエターノ市に近い優良都市は、モザンランジア(ゴイアス州)、リオ・ケンテ(同)、ブラジリア、ゴイアニア、クラウジア(マット・グロッソ州)、ヴィトリアの七市で、全国四六〇五市の中で抜き出ている。
これらの黒人差別につき関係者は、これまで国はグローバルな政策を施してきたと思い込んでいるが、実は忘れていて、奴隷時代の考え方が今でも改められていないと批判している。