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4カ国で描いた人間愛=片岡さん=サンパウロで映画撮影終える=自主制作=超低予算=各国でゼロから構想4年、協力の輪広がり

2005年11月26日(土)

 「終わった―!って、日本語で思いっきり叫びました」。九月初旬に来伯、三カ月間サンパウロ市内で自主制作映画の撮影に取り組んだ片岡秀明さん(31、茨城県出身)は満面の笑みで撮影終了時の感動を話した。二〇〇一年から東京、パリ、ロサゼルスで撮影。単身ロケ地に乗り込み、スタッフを集め、オーディション、照明、美術までこなす。映画の題名は「THE CROSSWORD MONOLOGUES」。四都市を舞台にした家族愛、人間愛をテーマにしたヒューマンドラマだ。サンパウロの撮影では、「スタッフも嫌な顔一つせず、よく働いてくれた。一番スムーズに撮影が出来ました」。編集作業後、撮影した国で開催される国際映画祭などに出品する。
 四年をかけた映画撮影にかかった総費用は、飛行機代も含めて約百五十万円。自主映画とはいえ、かなりの低予算。東京を皮切りにパリ、ロサンゼルス、パリと撮影を行ってきた。
 「映画を作る思いに国籍は関係ない。みんな気持ちよく協力してくれました」
 各国で百人以上が映画制作に携わったが、出演する役者やスタッフは全くの無償。パリの撮影ではインターネットで協力者を呼び掛けることから始まった。まさにゼロからの出発のうえ、資金は雀の涙。
 「屋根裏部屋を借りて、フランスパンを齧ってやり抜きました」
 サンパウロでは、友人を通してメールをやりとりしただけの映画関係者が頼り。もちろん、ポルトガル語はできないため、会話はすべて英語。「ロスアンゼルスに六年いたことが、色んな意味で役に立った」
 映画好きが高じて九九年、憧れの〃ハリウッド〃があるロスに留学。語学を学びつつ、アルバイトなどで映画の制作現場に足を運んだ。
 「やっぱり、映画作りの基本はハリウッド式。サンパウロでも撮影手法などの違いで困ることはなかった」と振り返る。
 ただ、治安の問題で昼間でもセキュリティーをつけるなどの〃ブラジル式〃も今回身につけた。
 主演女優が撮影中に怪我をするなどのハプニングもあり、「二週間完全に撮影がストップ。頭を抱えました」とも。十九日に撮影が終了、スタッフの拍手と抱擁の嵐のなか、四年間の思いがこみ上げ、「終わった―!」。大声で叫んだ。
 「スタッフには本当に感謝。誕生会を開いてくれたり、撮影後にみんなで遊びに行ったり。他の国とは違い、友達としても付き合ってくれた」とほとんどなかったブラジル人の印象も今は、強い。
 映画の構想となったのは、ロスの語学学校で各国の留学生と知り合ったことだという。
 「留学当時、片言の英語で色んな国の人と話すんだけど、結局は疲れちゃって日本人同士と話したりもする。もし、英語を使わなくても自国の言語のままで意思を完全に伝え切ることができる世界だったらどうなるか」と考えたことがきっかけだという。
 「もっと発展させて、話す必要もなく、他の国に住んでいる人ともコミュニケーションができたら」。言葉や場所をも超えたシチュエーションが舞台の映画を目指した。
 映画は、四カ国のカップルや家族が話し、考える内容にそれぞれの言葉で呼応することによって、ストーリーが進行していく。
 「例えば、ブラジル人と僕が二人にとって他言語である英語で会話するとき、〃人間対人間〃と感じる。そこで電話があってポ語で話した途端、〃ブラジル人対日本人〃になってしまう。そういう意味での言語、国の相違を映画の中では排除したつもり」と説明する。
 出演する俳優の出身国のイメージを消すことにも腐心した。自身の友人、知人の様々な性格や癖を組み合わせて〃モザイク人間〃を設定、演技指導には力を入れた。
 帰国後、編集作業に入る。「文化、国、言葉、固定概念を超えた映画に仕上げるつもりです」と自信を見せる。完成予定は来年三月。
 「撮影した四カ国はもちろん、出来る限りの映画祭に出品するつもりです。その数でギネスブックに載るくらい」と満足そうな笑顔で汗をぬぐった。