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帰国後の起業、子弟教育、犯罪…デカセギの現況知る=地域協力者集めセミナー=CIATE主催

2005年11月26日(土)

 国外就労者援護情報センター(CIATE、二宮正人理事長)のセミナー「第二回地域コラボラドーレスの集い」が十九日、ニッケイパラセホテルで開かれた。CIATEの地域協力者の知識向上と、デカセギに関する情報の普及を目的とした同セミナー。五人の専門家が日本語や子弟教育、帰国後の起業などについて講演したほか、CIATEの活動を紹介した。日本からは塚田千裕・海外日系人協会理事長など関係者が来伯。百人以上が会場を訪れ講演に聞き入った。
 最初の講師は日伯文化連盟日本語講師のアレシャンドレ・デ・モラエスさん。日本とブラジルの社会・文化の違いを例を挙げながら説明した。
 国の大きさや歴史的な背景の違い。タテ社会とヨコ社会。グループ意識や集団の調和を重んじる国民性など、日本で働き、暮らす上で日本について知ることが必要と強調。日本語を勉強することで、無用のトラブルが避けられ、日本の文化や習慣を理解する上で役立つと重要性を語った。
 続いて、サンパウロカトリック大学社会福祉学博士のキヨコ・ナカガワさんが、昨年日本で行なった在日ブラジル人子弟の調査について報告した。
 ナカガワさんは昨年、愛知と静岡でブラジル人子弟やその親などを対象にインタビューを実施。講演では住民の三割を南米系外国人が占める豊田市の保見団地を例に、行政や民間ボランティアの活動を紹介した。
 デカセギ滞在の長期化にともなって起こりつつある子どものイジメや不就学、進路の問題や、ブラジル学校の少なさや両親の経済的負担など問題点を指摘。「(問題は)将来より深刻になる」と語った。
 子どもが日本語を身につけるにつれ、親とコミュニケーションが取れなくなるケースも出てきている。ナカガワさんは、こうした子どもたちの問題について「デカセギ開始から二十年。生まれつつある新しい世代はどうなるのか」と警鐘を鳴らした。
 午後からはSEBRAEサンパウロ支部のアレクサンドロ・デ・ソウザさんが「デカセギ起業プロジェクト」を紹介。これはデカセギ帰国後の起業を支援するため、訪日前と滞日中および帰国後に講座や情報提供を行なうもので、来年三月の開始を前に計画の概要を説明した。
 続いてサンパウロ総領事館の林栄二・査証担当領事が、一九九〇年の入管法改正前後から現在までのブラジル人へのビザ発給の歴史やビザの種類、申請の仕組みなどを説明した。国内滞在外国人の現状にも触れ、中でも外国人少年による犯罪が全体の六割弱(〇四年)を占めている現状を指摘。「真摯に受け止めてほしい」と呼びかける一方、「数字に表れない部分もある」として、ブラジル人デカセギが企業や地域の活性化につながった事例などを紹介した。
 元ブラジル銀行東京支店長のロベルト・カミロさんは、現金書留を利用していたデカセギ初期の時代から、三つの銀行が進出してカードや電話、インターネットで送金が可能になった現在までの歩みを説明しながら、効率的な送金の方法などについてアドバイスした。
 最後にマリンガ地域協力者のシレーネ・ヨシダさんが「マリンガにおける巡回CIATEについて」と題して、先月同市で三千人が参加したセミナーの成果を報告。市やマスコミ、同地の文協と協力したデカセギ支援、起業支援活動を紹介した。
 CIATEの地域コラボラドール十四人が紹介され、セミナーは終了。同日夜には関係者を招いたレセプションが開催され、藤井伸章・厚生労働省外国人雇用対策課長、堀坂浩太郎上智大学教授などが講演した。