「一九三四年四月二十三日、夕方五時にサントスに着いた」。自身の歴史を時間までしっかりと記憶している内山雅満さん(83)は張りのある声で熱弁をふるった。
カナーン耕地に入植しカフェ栽培をしたが、その当時は最盛期も終わり、借金ばかりが積もっていった。そのため同地は一年契約だったが、ほとんどの人が一年もいないうちに夜逃げしたそう。内山さんは六ヵ月でジュキア植民地に第一入植者として移住した。茶の栽培や養蚕を始めようやく食べられるまでになった。しかし、同地は「勝ち組」が多く、蚕はアメリカに輸出する物だからつくるな、と言われレジストロに避難。戦後はサンパウロ市でさまざまな会社で働いた。
「もう自身の歴史は長すぎて語れん」。どんどん亡くなっていく一世。本ではない生の歴史を聞ける貴重さを改めて感じた。 (南)
05/11/26