2005年12月01日(木)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙三十日】政府は二十九日、ジルセウ前官房長官を議員権はく奪表決から守る救出大作戦の展開を決めた。前官房長官の議員権はく奪を政治危機解決の近道と考えていたワグネル憲政相も、同はく奪が大統領府の損失であるとして、連立与党にも作戦への協力を要請した。裏金疑惑の黒幕と告発された前官房長官の救出へ向けて労働者党(PT)幹部全員がこぞって、院内活動を始めた。パロッシ財務相も風前の灯火である現在、前官房長官は政府の命綱として注目されている。議員権はく奪表決は三十日午後七時開始予定となっている。
ジルセウ前官房長官の議員権はく奪は政治危機解決のための人柱と考えた四カ月前とは急転、政府はなりふり構わず前長官の救出へと作戦を変更した。はく奪阻止が不可能な場合、政争の犠牲者として前長官の花道を飾り、尾羽を打ち枯らし退場する落ち武者の姿をさらさせたくないという政府の心遣いがあるようだ。
政府の救出作戦は、前官房長官のはく奪表決へのボイコットを呼びかけ欠席多数で表決を葬る考えらしい。裏金システムを指揮した黒幕と告発された前官房長官は、飽くまで事実無根と最後まで抵抗する考え。
下院のはく奪表決開始前に、最高裁のペルテンセ判事が前長官の延期要請があることを報告する。同判事は、はく奪表決を中止するため下院の了承を求める。最高裁裁決は二十三日に引き分けた経緯があり、静養中であった同判事の決定票が投じられるまで、下院倫理委員会の決議を保留するよう最高裁が要請する。
議員権はく奪には、下議五百十三人のうち最低二百五十七票の賛成票が必要。これは造反がなければ野党だけで必要数が揃う。投票形式は無記名なので、どっちへ投票しても世論の制裁を受ける心配はない。世論はジルセウ追放が大勢なので、前長官がはく奪を免れると下院は世論から批判の集中砲火を浴びる。
大統領府の見方では、ジルセウ救出に一縷の望みがあるという。四カ月前は前長官の首級を渡し、政治危機に終止符を打つ算段が大統領府を支配していた。しかし、野党の攻勢がパロッシ財務相の首を狙い始めたので情勢が変化した。
財務相がこければ、次は本丸の大統領である。ルーラ不在のPT政権には前長官の返り咲きが必要不可欠になった。裏金否定で徹底的にシラを切り、難局を乗り切るオトボケ作戦に変更したようだ。
二十九日までの情勢では、ルーラ大統領誕生の影の立役者とされる前官房長官の議員権はく奪表決は不確定であった。複雑な司法手続きのため三度も延期されたはく奪表決は、三十日実施の可能性が濃厚になった。救出票はまだ二百票しかなく、六十票不足。浮動票は百十三票ある。
最高裁は三十日、先に引き分けた議員権はく奪審理の決定判決を行う。ここで前長官が勝訴になると、下院執行部は再審のため倫理委員会へ決議を戻す。時間を稼げる可能性ができたジルセウ前長官は、自らPTの総指揮官として表決の延期工作と阻止票の説得作戦で動き始めた。