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ブラジルで注目の無神論=人間中心主義は幻想=自己管理できずアマゾン森林破壊=百年後、人類は激減?

2005年12月07日(水)

 【ヴェージャ誌一九三二号】信仰は幻想。運命は人間に定められたものではないという英国の思想家ジョン・グレイ氏が自著「ワラの犬」ポ語版をレコルデ出版から上梓するため来伯した。近代ヒューマニズムはキリスト教の落し子で、幻想に過ぎない。人間は宇宙の中心でも万物の霊長でもなく、人間が地球を背負っているわけではない。人間も宇宙の生物同様、自然の法則に従うしかない存在である。前大統領を始め無神論がブラジルで注目される中、同氏の説は神頼みやコダワリから解放するものだと反響を呼んでいる。
 ブラジルで最近無神論者が増え、同氏の宇宙論が注目を引いている。
 【信仰が幻想だとすると、進歩のために信仰は不要か。】信仰は進歩のために不要だし、人生の一部でもない。信仰はわずか二世紀前に人間が考え出したものに過ぎない。所得格差が広がると、明日は今日よりも平和で幸福であると信じたくて、庶民は信仰という幻想を作り出したのだ。よく観察すると、信仰は悪い夢だ。平和であるはずが、争いになっている。幸福が不幸になった。ブラジルでも進歩でなく、退歩だ。
 【科学の世界でも、進歩は幻想か】科学や技術の世界では、進歩は結果である。進歩は知識と力を増やしたに過ぎない。この力は建設にも破壊にも使われる。進歩が倫理や政治に利用されると、危険な幻想を生む。ブラジルに好例はないが、戦艦大和の技術は戦後日本の工業発展に生かされた。ゼロ戦の技術が新幹線に生かされた。科学は戦争によって進歩するという幻想の好例といえる。
 【人間は世界を征服した動物か】人間は言葉や道具を発明したことで、文化を残した。人間は動物の中で他の動物が出来ないことを考案し、特異で狂暴な存在となった。地球征服の次に宇宙征服を試み、自らの首を締め人類の生き残りを難しくしている。ブラジル人は考案された動力と道具を、アマゾン熱帯雨林の破壊に使った。人類は自己管理ができないのだ。
 人類は五十年後、九十億人になる。百年後、人類は激減するに違いない。人類の激減には二つの方法が考えられる。一は日本のような少子化現象。もう一つは戦争や疫病、異常気象など。この現象がブラジルにどんな形で影響を及ぼすか分からないが、人類の進歩は脆く、恐竜が死滅したように突然人類も滅亡するだろう。
 【人類霊長説を否定するが、人類以外に霊長類はあるか】あり得る。モラルは人間の産物ではないと、仏教も道教もいっている。霊長説はキリスト教が考え出したもので、カトリック教に培われたブラジルでは理解され難いことだ。人間も動物も全ての生物と同じで環境によって支配され、過去に多くの生物が死滅したように人間が環境の変化で滅亡することもある。
 【人間が単なる動物で、なぜ世界支配ができたか】それは言葉と道具の発明、文化の伝達を可能にしたからだ。他の動物は人間の文化レベルに達しなかった。人類は地球征服を敢行したが、宇宙征服では勝手が違う。人間はアマゾン熱帯雨林を即時破壊できても即時再生はできない。アマゾン熱帯雨林の再生ができないものに、宇宙管理もできない。環境管理ができないなら、五十年後の人口抑制も不可能だ。
 【人間の素質は、否定的結果しか生み出せないのか】否定的だけとはいえない。麻酔薬を考案したお陰で、痛みを覚えず歯を抜くことができた。同じ素質が大量殺人兵器を生んだ。大量殺戮は技術の進歩の副作用で、殺人は有史以前から行われた。ブラジルにジェノサイドはなかったが、これは人類の素質である。
 【バイテクやナノテク、ITは人類に素晴らしい未来をもたらすというが、どこで人類は間違えたのか】間違えは、考え方にある。科学は宗教より真理に近く、感情でも魔術でもない。知識は倫理的に中立である。その知識を素晴らしい方へ利用するか、恐ろしい方へ利用するかで未来が決まる。科学は不可能に挑戦するあまり幻想に挑戦することもある。ブラジルでも生命への挑戦は盛んだが、幻想は科学と根本的に異なるものなのだ。