ホーム | 日系社会ニュース | デカセギ問題 国家対策へ 議会調査委が公聴会=関係者ら喜びの声=「ようやく議員が」注目される法令整備

デカセギ問題 国家対策へ 議会調査委が公聴会=関係者ら喜びの声=「ようやく議員が」注目される法令整備

2005年12月08日(木)

 「ようやく議員がこういう問題に手をつけるようになってくれた」。違法出移民に関する議会調査員会(CPI)の公聴会に参加して、在日ブラジル人支援をする教育文化連帯協会(ISEC)の吉岡黎明理事長はこう喜んだ。同調査委員長のマルセーロ・クリベロ上議も「日伯両政府が最大限の統合的対策をとることが望ましい」との認識を示すなど、連邦レベルでデカセギ問題が正式に認められたことになり、今後その対策が、どのように法令に反映されるかが注目されそうだ。
 二日午前九時からサンパウロ市内ニッケイパラセ・ホテルで行われた公聴会は、「違法出移民」議会調査委員会の一環。これは上下院合わせて約三十議員で組織され、五カ月前に設置された。
 当日は同委員長マルセーロ・クリベラ上議、報告書まとめ責任者のジョン・マギノ下議、日系社会担当コーディネータとして高山ヒデカズ下議、そのほかジェラウド・タデン、マリア・アウメイダ両下議らあわせて五連邦議員が出席した。日系社会側からもデカセギ支援団体、派遣会社、就労経験者ら約六十人が参加した。
 冒頭、吉岡理事長が約四十分に渡ってデカセギ問題の歴史と全体像、特に子弟の教育問題、家族崩壊、定住化傾向などを説明。「もっと政府レベルの支援が必要」と要請した。デカセギ・ブラジル協会の名誉会長、原ルイ・クリチーバ市議も同協会の帰国者起業支援活動などを説明。
 今公聴会をコーディネートした高山下議は「在日ブラジル人は違法滞在でこそないが、さまざまな問題を抱えていることをこの機会に十分に理解してほしい」と主旨を訴えた。
 続いて、パラナ日伯文化連盟の国外就労者情報援護部、藤井・岡林・エステーラ部長は、日本からのデカセギ問題調査団を幾つも受け入れた経験から、ブラジル政府側も積極的にこの問題に取り組むべきとの意見を述べ、「このままでは日本で幼少期を過ごした一世代がまるごと失われる瀬戸際にある。両国政府による早急な対策が不可欠」との強い危機感をしめした。
 日系社会側からの報告を聞いたあと、マギノ下議は「この分野に関して連邦議会初の調査だ。日本での問題を報告書に加える重要な意義を認めた。今後の関係各省との協議を進めるときに重要な交渉材料になるだろう」との感想を語った。
 最後にクリベロ委員長は「将来、インドや中国などと共にブラジルが世界を牽引する大国になったら、現在、外国にいるブラジル人も帰国すると同時に、さまざまな外国人が移住してくるようになる。そのときのために準備しておく必要がある」との意義を強調。「税金や年金問題に関しても、日伯における最大限の統合対策が望まれる」と結論付けた。
 同上議は、今回報告された件の一つ、数年前に日本への航空運賃が二倍に跳ね上がった件を航空関係省庁に事情聴取することを確約。外国で出生したブラジル人子弟が帰伯後に正式に身分証明をとる際、現在はわざわざ弁護士を雇って「ブラジル人になるための法的手続き」をする費用がかかる現状を是正するための検討をその場で約束した。
 また高山下議はニッケイ新聞の取材に対し、「この調査の結果をブラジル外務省、上院、セブラエらと協議し、どのように具体的な法律に反映していくかを話し合う」と意欲を示した。
 前日晩には十六人の日系市長との夕食懇談会も行われ、在日ブラジル人が直面する問題についての認識を深めた。
 今月までに最終報告書が作られる予定だったが、来年三月か四月に延期される見込み。現在、上下院合同議会調査委員会は、国家的な見地に立って最も重要かつ早急な解決が求められる事項に関して特別に設置される。「郵便局」など五委員会が設置されている。
 グローボTV局の連続ドラマ「アメリア」で北米への違法入国労働者に焦点が当てられたこともあり、欧米を中心に調査するものだが、今回は在日ブラジル人の現状に関する公聴会を開いた。すでにボストン(米国)やロンドン(英国)での現地調査も行われており、今後、日本へも行くかどうか検討されている。