2005年12月09日(金)
第八回内田百閒文学賞の随筆部門で、日伯文化連盟の日本語教師、中田みちよさん(ブラジル日本語センター理事、青森県出身、65)が大賞をとった。作品は、非日系人男性と結婚した亡き娘を題材にしたもの。「私たちはブラジルに根を張り、ブラジル人と融合して生活していることを日本の人にも分かってもらえれば」と喜びを語っている。
一世の親の場合、子供が非日系人と結婚することについて、抵抗感を示すことが少なくない。中田さんは娘がイタリア系の恋人を自宅に招くときの葛藤などを、四百字詰め原稿用紙約四十枚に綴った。
娘の義父は化学技師でマタラーゾ財閥に勤務していた。倉敷市に視察に訪れた時の写真を、中田さんとの会話の糸口にした。父、中田定和さん(ブラジル将棋連盟会長)はその場にいなかったが、初対面をうまく乗り切った。
中田さんは「移民百周年を間近に控えて、郷愁の文学から変わりつつあり、混血も進んできています。日本の方にも、そういう移民の姿が分かってもらえれば」と、作品に込めた思いを話す。
同賞は、岡山にゆかりのある文学作品(長編小説・随筆)を募集した文学賞、岡山が舞台となる作品・岡山県出身の人物、自然、文化、風土、物産などを題材としたオリジナル未発表を対象にしている。賞金百万円。来年三月に授賞式が開かれる。