2005年12月13日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドを硬直状態にしたEU(ヨーロッパ連合)が十一日、わずかながら農業補助金制度で譲歩の兆しを見せ、十三日から香港で始まるWTO閣僚会議に明るい見通しをもたらした。EUは途上国の工業分野での譲歩を前提として、農業分野で譲歩する意向を示した。疑心暗鬼のアモリン外相はEU案に、補助金制度廃止の日付を明示するよう要求した。農業補助金で最後の決戦場と位置付けられる香港会議は十三日、百四十九カ国の閣僚が集まり、決裂か前進かの詰めの会議に入る。
農業補助金制度で最後の難関とされたEUに変化が見えた。まだ予断は許さないが、ブラジルやインドなどの途上国が工業分野で譲歩することを前提として、農業分野での譲歩をEUがほのめかした。準備会議での表明なので、途上国代表はEUの変化をまだ真しに受け止めていない。
公式閣僚会議は十三日からだが、前哨戦は既に始まった。マンデルソンEU代表の意思表示は、EU部会の席上でインド代表に対して行われた。
アモリン外相は香港でEUが農産物市場の完全開放に応じるとは考えていないが、EU代表が示唆した内容は、EUが輸入する農産物の一〇%を市場開放するというものだと述べた。
EU代表は十二日、ブラジルとインドの代表を訪れ、これまでの取り付く島もなかった態度に柔軟性を見せた。EUの問題は、フランスのように妥協性のない加盟国があることだと告白した。英国は農産物の完全開放に同意した。EU代表は、フランスのために柔軟性のある合意案を目下模索中だと語った。
アモリン外相は、EU代表に四段階からなる関税削減案を提案した。完全開放できる農産物、低率関税にできる農産物、市民の生命と安全保障に関わる生活必需農産物、その他など。EUは二百種類を挙げ、猶予を求めた。二百種類は多すぎると、ブラジルはEUの甘えをたしなめた。
ブラジルは最終的に、二〇一〇年を以って一切の交換条件をつけず、補助金制度の廃止を求めた。それでもEU代表は、米国が農産物の輸出クレジット制限を決定する日まで同廃止期限を繰り延べるよう食い下がった。アモリン外相は、同廃止の最終決定を他案の絡みで決めるとし、EU代表も納得した。
ブラジル代表は十二日、米代表を特別に招き、G20部会を取り仕切る。予算カットに取り組む米政府は、二〇〇六年度予算から農業補助金予算を削減するという。外相は、対米交渉では同問題がスンナリ治まると楽観視している。
香港で開催されるWTO閣僚会議は、先進国内で付与されている農業生産者向け補助金にも触れる。特に補助金を受けて輸出する農産物、補助金に守られて輸入を阻止している農産物に対し、途上国の目が厳しくなった。伯米間では五年期限の補助金廃止が大筋合意に達した。この伯米間暗黙の合意が、香港WTO閣僚会議の梃子入れになるようだ。