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生まれ変わる=農業の山本賞=改革関係者に聞く=「権威あるものに」=歴代受賞者=31人の仕事=映像として残したい

2005年12月13日(火)

 山本喜誉司賞が変わりつつある。文協内の小委員会から選考委員会に昇格、今年から日系農業団体代表者が選考を受け持った。今まで他式典と合同で行っていた授賞式も独立した形で行うことになった。そして、農業に貢献してきた受賞者たちを顕彰するだけでなく、その技術、農業理念を記録に残す事業にも取りかかる予定だ。山本賞改革の全体的なコーディネーターを務めた文協の小川彰夫副会長と関係者に話を聞いた。
 山本賞の創設四十周年記念式典と本年度の同賞授賞式が先月二十五日に開かれ、約百八十人の関係者が集まった。植物学者の橋本梧郎氏、ポンペイアにある西村農工学校の西村俊治氏、初代文協会長でもあった山本氏の息子、坦・カルロス氏も会場に姿を見せ、節目の年にふさわしい盛会ぶりを見せた。
 従来はコロニア文芸賞、三井住友交流基金の学術研究対象者や功労者表彰などと共に開催されていた。出席者数も読めないなか、本年度から同賞授賞式を独立した形で行うことに踏み切った。
 ブラジル農業技術者研究会(ABETA)やその関係者が受賞者を選考してきたが、今回からブラジル農業婦人部連合会(ADESC)、東京農大会、ブラジル農業拓殖協同組合中央会(農拓協)、全国農業拓殖協同組合連合会(JATAK)サンパウロ事務所など各農業関係団体が選考にあたった。
 農拓協の近藤四郎会長は「初めてのことだったけど、みんな熱心に会議に出席して色んな意見がでていた」とその熱気を説明する。
 同賞の改革に取り組んだ文協の小川彰夫副会長は「コロニアの原点は農業。だけど、日系農業団体が一緒に活動することが少なかった」と山本賞を通した各団体の連携強化に注目したという。
 JATAKの馬場光男所長は「山本賞は日系農業者を顕彰する唯一の賞。できるだけ間口を広げ、広い意味で解釈、選考に当たった」と話す。ADESCの発足、発展に尽くした栖原マリーナさんが今回受賞したことからも選考委員会の新しい方向性が見てとれる。
 式典後、文協大ホールで行われた祝賀会では、初めての会費制を取った。参加費三十五レアル。
 「寄付は賞に対してのものであるべき。飲み食いに使うのはどうか」と馬場所長は会議で主張した。
 「でも、あんなに人が来るとは。ビックリした」と笑う。
 「『今まで通り無料で』と思っていたけど、一世、特に田舎で農業やっている人は遠慮深い人が多いからね。お金を払った方が家族や知り合いも連れてきやすかったのでは」
 結果的に参加費を取ったことで多くの出席者を呼ぶことができた、と小川副会長は評価する。
 寄付や援助は今回、ポンペイアの西村農工学校、イハラ、サカタ、タキイなどの農薬や種苗会社。個人、団体からの協力も農業関係に限った。祝賀会の参加費を取ったことで、寄付金は全額残った。
 生きた寄付にしよう―。
来年の山本賞までに少なくとも三回はセミナーを開き、「現役で頑張っている今までの受賞者、三十一人のインタビューや仕事ぶりを映像として残したい」と小川副会長は張り切る。
 近藤農拓協会長は「文協が機会を作ってくれ有難い。選考にあたることも来年からの事業計画のなかに入れるつもり」とやる気を見せる。
 日系農業団体の連携を図ることは、南米日系農協連絡協議会で代表幹事を務める農拓協の意義とも重なるという。
 「来年は全伯からどういう人を選考するか。山本賞が本当にもらいたいと思われる権威のある賞になれば」。馬場所長も山本賞の更なる価値付けに真摯な姿勢を見せている。
 選考委員会が力こぶを見せる〃農業者の農業者による農業者のための山本賞作り〃。百周年を控え、日系社会の原点、農業を見据える大きな動きとなることが期待される。