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チャベス大統領の狙いは?=メルコスル加盟で欧米交渉に暗雲

2005年12月14日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】メルコスルにベネズエラが加盟したことで何が起きるか。ウルグアイのヴァスケス大統領と亜国のキルチネル大統領が、チャベス大統領の仲人らしい。ルーラ大統領は五番目の客が加盟したことについてコメントしていないが、ブラジルへの対抗意識から共同前線を張ったとみているようだ。
 経済的観点から見るとベネズエラは、メルコスルへの加盟はどうでもよいことと思う。同国がもっているのは原油だけで、世界中が喉から手が出るほど欲しがっている。ベネズエラが国内市場をメルコスルの工業製品や農産物に市場開放することも、食指が動くことではない。
 同国のメルコスル加盟は手続き中の段階である。オウロ・プレットで一九九四年、締結した域内関税や加盟国間に利害関係が生じた場合の裁定基準で、メルコスルの加盟条件を同国が満たしているかも定かでない。同国の加盟には、もっと大きな障害物がある。
 ベネズエラは現在、コロンビアやペルー、エクアドル、ボリビアとアンジナ関税協定を結んでいる。同協定加盟国は、域外からの輸入品に差別関税を課している。アンジナ協定加盟国の了解なく、ベネズエラが独走することはできない。それが勝手に一人で、メルコスルへ飛び込むのは理解できない。
 アンジナ協定には、メルコスルと異なる域内と域外関税協定がある。この辺の二重加盟をどう扱うのか、全く説明がない。同国はアンジナ協定から脱退するのか。チャベス大統領が反米路線に走ったことで、同国以外のアンジナ加盟国は米国と個別に通商交渉を行っている。
 政治的観点から見ると二〇〇六年、メルコスル・EU通商交渉が再開される。ベネズエラのメルコスル加盟は、同国政府を弄ぶチャベス大統領に批判的なEU諸国へ一泡吹かせる狙いがあるようだ。
 チャベス大統領の狙いはまだある。米国とメルコスルの間で交渉中の4+1協定を、5+1協定に変換させることだ。ベネズエラが加わった5+1協定となると、交渉は完全に決裂する。米国に敵意を抱く爆弾児を抱えたメルコスルと5+1交渉の席に、米国が就くわけがない。
 英紙フィナンシャルル・タイムズは二十三日、EUはブラジルの農業生産力が技術的に格段の差があり、恐怖の的となっている。そこへベネズエラの暴れん坊が加わり、何を仕出かすのかと報道した。
 ブラジル外務省のやり方はまず問題を起こし、後で交渉に臨むらしい。その逆はない。メルコスル協定があって、そこそこに成果を挙げている。その協定がちん入者に振り回されて物議をかもし、継続不可能なら、ブラジルはそれをバネに交渉の本領を発揮するらしい。