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ガソリン密輸でボロ儲け=ベネズエラにブラジル車の長い列

2005年12月16日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十一、十三日】ベネズエラとの国境のロライマ州都のボア・ビスタ市は、破格に安いベネズエラのガソリンをブラジルに持帰り、販売することでボロ儲けするというにわか密輸が急増している。
 ベネズエラものガソリン価格はリットル当り七〇ボリヴァレス(〇・〇七レアル)、ディーゼルは四八ボリヴァレス(〇・〇五レアル)とべらぼうに安く、ブラジル・ナンバーの車には違法ながらそれぞれ〇・二〇レアル、〇・一八レアルの値段をつけている。
 しかし、ブラジルのガソリン価格とは雲泥の差があり、ボア・ビスタ市から二二五キロの道程ながら、ベネズエラの国境の町、サンタ・エレナ市に日参してガソリンの買出しをするブラジル車が長い行列を作っている。ブラジル側のガソリン価格は安いスタンドで二・八〇レアルから二・九〇レアルで、にわか密輸商人はベネズエラ産ガソリンを一・八〇レアルから二・〇〇レアルで売っても莫大な利益となる。
 ベネズエラ側の販売所では常連客の足元を見抜いて密輸用には一・〇〇レアルの価格をつけて〇・九三レアルのこれまたボロイ儲けに便乗している。それでもブラジルでは巨額の利益が得られることで、買出しが増えて品切れになることもしばしばで、この場合買物客は次のガソリン配給車が来るまで待つことになる。行列も道路整理の国境警備軍隊へのワイロ次第で前方に並べるため、貧乏人は常に後方待機となる。
 ブラジル側の国境税関はフラスコなどの容器による持ち込みは規制の対象となるが、車を満タンにして戻るにはとがめがない。これが盲点となり、満タンにする買出しが急増した。中でも目立つのが「ガソリン喰い虫」とあだ名された五〇年や七〇年代のギャラクシーやドッジ・ダーツの大型中古車だ。これらのタンクは一二〇リットル入りで、改造すると一七〇リットルになる。これでブラジルに戻ると普通の乗用車の三倍から四倍の量を一度で運べるため、少々車体が崩れたり傾いても重宝がられている。
 サンタ・エレナ市は人口二万人で、市内二つのガソリンスタンドでは一カ月二〇〇万リットルのガソリンが販売されているが、その半量の一〇〇万リットルはブラジル人が買っているという。奇しくもボア・ビスタ市では消費の四五%に相当する二〇〇万リットルが違法販売となっている。
 こうした実態を重視した州政府は連邦と共同で対策を検討している。具体案はないものの、ベネズエラ側でのブラジル車に対する販売価格を引き上げて価格差を基金に積み立て、国境の環境整備に役立てるなどのアイデアも出ている。
 これにより改めてブラジルのガソリン価格に含まれる税金の高さが注目されている。ブラジルのガソリン価格は世界の主たる国で七番目となっており、リットル当り一・一一一ドルとなっている。このうち税金は〇・五四四ドルで、アルゼンチンの価格〇・五九四ドルにほぼ匹敵する。
 この税金を差引いたネット価格はカナダのネット価格の〇・四九一ドル、日本の〇・六四六ドルと同水準となる。世界の価格ランキングは順に英国(一・五八八ドル)、イタリア(一・四七一ドル)、ドイツ(一・四六一ドル)、フランス(一・三八六ドル)、スペイン(一・一六六ドル)、日本(一・一五六ドル)、ブラジルで、ランク外ではカナダ(〇・七五二ドル)、米国(〇・六五五ドル)となっている。業界筋によるとブラジルのガソリン税は国家税収の二五%に相当するウェイトを保っているという。アメリカではリットル当り〇・一〇四ドルで一五%に相当している。