2005年12月17日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】ルーラ大統領は十五日、停滞している経済成長を刺激するため一部製品を対象に工業製品税(IPI)を免税とする大統領令を発令するとともに、プライマリー黒字(債務償還前の財政黒字)の一部を各省に供出することを決定した。さらにこれに加えて経済関係閣僚に対し、経済成長に向けて短期的に効果の出る優先政策の検討を指示した。
大統領がこれまでの楽観的かつ強気な態度を維持してきたのとは裏腹に、経済のタテ直しに急転直下奔走し始めた背景には、ブラジル地理統計院(IBGE)が発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)のマイナス成長が政府にとって青天のへきれきだったことによる。
さらに加えて十四日に発表された中銀の基本金利引下げ幅が政府および一般の思惑が外れて小幅だったことにもよる。今回の大統領の経済タテ直し策は金利が与える悪影響を緩和する狙いがある。
政府によると、プライマリー黒字は目標通りGDPの四・二五%相当になり、一月から十月までの財政切り詰め目標四六五億レアルが実際には五八三億レアルに達したことから、この差額の一二〇億レアルの年内支出を決定したという。この供出で短期的効果が出るか疑問視する向きもあるが、大統領は「金(予算)があると、大臣は良い知恵が浮かぶものだ」とうそぶいている。
いっぽうでIPIの税率をとりあえず十四品目につきゼロとしたことで、政府筋は輸入品に対抗すべく国内産業の振興としており、さらに短期間にこの枠を広げるとの意向を示している、これにつき国税庁は、一時的に税収は減少するものの、この措置で投資が増えることで見返りがあり、インパクトは少ないとしている。またこの措置で金利に頼らずにインフレが抑制でき、GDP成長につながるとみている。
今回IPIが免税となったのはGDP成長が今一つの農業界で、トラクターやガスコンプレッサーが従来の五%からゼロとなった。またDVDやCDなどのソフト製品が一五%からゼロとなり輸入品に対抗できるようにした。ノッタフィスカル(売上伝票)発行機器も一五%から免税になり、脱税防止に貢献するとしている。今後は対象品を増やすほか、類似品ながら税金の異なる税制を改めることも視野に入れている。
一連の経済政策は歓迎されているが、十四日に発表されたIBOPEの次期大統領選挙でルーラ再選が不利な状況に陥ったことから(本紙十六日付二面トップ)人気挽回策の一環と、うがった見方もある。