2005年12月20日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日、十九日】法定預託金の累計が国内で五〇〇億レアルに上り、これを独占的に運用しているブラジル銀行(伯銀)およびカイシャ・エコノミカ(連邦経済公庫)が莫大な利益をあげていることで、関係者から批判の声が挙っている。さらに両行がこの預金を受け取る見返りに裁判所の改修や必要経費の一部を肩代わりしていることが明るみに出て、国家法務審議会では金融法に抵触する疑いもあるとみて、それを見直す動きが出ている。
法定預託金は裁判を提訴した場合、法定費用や賠償金(金銭が絡む場合)の最低額を裁判所定めて預託させるもので、現在この種の裁判は二〇〇万件に上っている。預託金は判決が出て初めて預託者に戻されるが、ブラジルでの裁判は通常数年、あるいは数十年に及ぶことから、預託を受けた銀行は長期にわたりこの資金を世界で最も利回りの良い投資に運用できる利点がある。
銀行への預金名義は裁判所となるが、裁判所は法で定められたポウパンサ預金の利率しか受け取れない。例えば銀行は一〇〇〇万レアルの預託金に対し五年間で五一・二%の利子を支払うが、いっぽうで銀行は最低でも八一・七%の投資に回すことができ、その差額は莫大なものとなる。「他人のフンドシで相撲を取る」銀行だが、確実に数年はかかる判決による資金の運用ほど、おいしいものはない訳だ。
しかし、関係者の間には金の持主である預託者の同意がないまま、裁判所と銀行が利益をあげるのは金融法に反すると指摘する声もある。預託金は法令で公立金融機関に預けることが義務付けられている、故に前出の両行と、元は官銀で現在は民営化された銀行もその対象となっている。これに対し市中銀行は、ウマイ話の独占に意義を唱え、入札方式による一般銀行への解放を求めている。
裁判所側も利回りの良い市中銀行を望んでいる。これに対し伯銀側は裁判所の経費を負担することを見返りとしている。リオデジャネイロ市の裁判所は年間三〇億レアルの預託金を伯銀に預けているが、その見返りに二〇〇三年十月から現在までに一億七〇〇〇万レアルの〃金融無償支援〃を受けている。
これらは裁判所ビルの新設や改修、コンピューターシステムの改善費、従業員の医療費や食事代(チケット)、警備費などに当てられている。この支援は予算の三分の一に相当し、ために裁判所は黒字財政が続き、他の行政局に資金を貸付けるに至っているという。この癒着も問題視されている。
一方でカイシャ・エコノミカは連邦裁判で一九八億レアルの預託金となっている。うち七六億レアルはサンパウロ州のみ。さらに州裁判で一五〇億レアル、労働裁判で一〇〇億レアルの巨額な預託金を運用している。