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邦人誘拐事件が解決=知花典子さん=監禁38日、無事に=サンパウロ市

2005年12月20日(火)

 沖縄県人会の第一副会長、知花良治さん(59、沖縄出身)の妻、典子さん(53、同)が十一月十日から誘拐されていたが、十八日晩、無事に解放された。ニッケイ新聞では犯人側を刺激しないよう、いままで報道を自粛していた。誘拐犯は連日自宅へ電話をして身代金を催促、最初は数百万ドルも要求するなど交渉は難航した。夫は親族や友人らの協力、市警の指導を受けながら辛抱強く対話を続けていた。十八日晩、アニャンゲイラ街道で典子さんは突然解放され、十一時過ぎ、自宅に姿をあらわし家族を喜ばせた。
 十一月十日午前、典子さんは車でサンパウロ市ビラ・カロン区の旅行社事務所に向かう途中、二人組に襲われた。犯人は彼女の車に乗り込み、同乗していた娘の恵理さん(23)も一緒に誘拐したが、すぐに解放した。
 同月二十二日時点で、知花良治さんは「毎日交渉している。あとしばらくで解放になると信じている」との力強く本紙の取材に答えていた。
 犯人側は当初、数百万ドルもの身代金を要求。市警の誘拐対策のプロが指導をし、根気強く交渉を続けていた。市警との間を取り持っていた男性によると、犯人側は「金が用意出来ていないのならこれ以上話すことはない」と強気の態度だったという。
 事件のことはすぐに県人会関係者の間で既に広まっていたため、「本当に心配してました。そのことを思うと暗い気持ちになる」と先月二十二日、協和婦人会関係者は語っていた。
 解放されたのは今月十八日夜で、「なんの連絡もなく突然の解放だった」と、その晩十一時頃まで良治さん宅にいた兄、稔さん(72)はいう。犯人らはアニャンゲイラ街道の山道で典子さんを車から下ろした。たまたま通りかかったブラジル人の車にのせてもらい、午後十一時過ぎにサンパウロ市の自宅に帰り着いた。三十八日間におよぶ監禁の末だった。
 翌十九日朝、稔さんに典子さんから電話があった。その時の様子を、「声に張りがあった。元気な声でほっとした。話を聞いて、彼女のしんの強さに感動しましたよ」と説明した。
 「私の想像ですが」と前置きしながら、稔さんは「娘を助けたという気持ちが、つらい監禁生活での彼女の心の支えになったのだと思う」と語った。「家族の団結が強まった。しばらくはゆっくりさせてあげたい」。
 十九日朝、良治さんから電話で「無事に帰りました」との報告をうけた沖縄県人会の与儀昭雄会長は「このようなことが二度とおきないことを願っている」との言葉を寄せた。
 サンパウロ総領事館の警備班、大熊博文領事は「人ごとと思わず、しっかりと防犯対策をとってほしい。日本人だから狙われないということはない」と注意を促した。