2005年12月21日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】ブラジル地理統計院(IBGE)が第3・四半期の国内総生産(GDP)を一・二%の落ち込みと発表したとき、ルーラ大統領も落ち込んだという。八月には年末にGDPが五%に達するとした声明を発表した手前、落ち込んだでは済まされないとアマラル元シティバンク頭取がいう。
英エコノミスト紙は、第3・四半期の経済成長率でブラジルは途上国中最下位だと報道した。ブラジルの一%に対し、アルゼンチンが一〇%、チリが六・五%、ロシアが六・一%。これは政府がインフレにばかり気を取られ、金利が法外に高く、通貨は為替街道を逆方向へ突っ走っていることが見えないことを意味する。
高金利の弊害が第3・四半期に現れたことを政府は認めない。為替政策不在の弊害はそればかりか、二〇〇六年と〇七年にも尾を引くことが分からないらしい。〇六年は一五〇〇億ドル輸出を宣言した大統領の予言ラッパも音が悪い。
フルラン産業開発相が、現行の為替率では輸出業者のほとんどが中期的にイザリになるという。それでもメイレーレス中銀総裁は、輸出業者の努力不足を糾弾し、通貨政策は為替に対し何ら責任がないという。
中銀総裁は市場を分かっていない。ドル高は輸出と直接投資に重要なので、先物市場で一五〇〇億ドルの輸出契約と七五〇億ドルのNDFがあることを忘れてはいけない。レアル通貨を引き上げる短期資金がまだ市場にあるのだ。
地域におけるドル通貨の為替率は投機家によって決められ、政府の一存ではいかない。浮遊するドル価格は、浮遊するというのを建前として一理ある。しかし、現実は投機家が汚い手段で自由に上げ下げし,汚い利益を挙げている。
シモンセン教授の名言「インフレは人をかたわにし、為替は人を殺す」を、将来泣きを見ないため思い出して欲しい。世界各国は自国の通貨防衛で必死であるのに、ブラジルはあまりに為替に関し悠長なのだ。中国は政府の指定した為替率で譲らない。日本は政策金利を超低金利に設定し、円高を防いでいる。
政府も中銀も、為替政策に本腰で取り組まねばならない。中銀のドル介入は空回りしている。バカの一つ覚えのように古典経済学にしがみ付いていないで、現実の経済学を学んで国際投機家の上を行き、為替市場をかく乱させないことが必要だ。政府が輸出業者を助けないなら、ブラジルの未来を誤る。