日本の地方都市では、市役所の事務所内清掃を事務職員が自分たちでやる、市長が公用車の運転手を廃止し自身で運転する、公園の芝生を高齢者グループがボランティアで整備する、など従来と違った状況が見えてきている。なぜか。「おカネを節約する」ためである。中央政府がそうするように、あるいは、そうなるように仕向けたのである▼同様の事態がブラジルでも起きる。ポルトアレグレ総領事館が、今年限りで閉鎖される。日本政府の出先がまったく無くなるわけではなく、在クリチーバ総領事館の別館として出張駐在官事務所が残される▼同総領事館は、一九六〇年に開設され、四十五年の歴史を刻んだ。最後の総領事となった長島浩平氏は十八代目であった。日系人の中心団体、南日伯援護協会が、十七日、長島氏の送別会を開いた。総領事を送り出す行事も最後だった。感無量だろう▼日本人移民は、同館が開く五年ほど前から、リオ・グランデ・ド・スル州内に入植、定着した。入植初期は、孤島に住み着いたかのように身辺がさみしかった。さまざま不自由もあった。誘致運動が実り開館、以来四十五年であった▼長島氏は帰国にあたり、高齢者の福祉、移住地の空洞化、世代交代にともなうアイデンティ問題についてふれ、世代間の連帯・協力を促した。閉鎖といっても、従来どおり、旅券、査証、戸籍、国籍など領事業務は続けられるし、実質的には不自由はない。困難に遭遇したら、自助努力で切り開いていくしかない。(神)
05/12/23