2005年12月28日(水)
【ヴェージャ誌一九三五号】ベネズエラのメルコスル加盟で、ブラジルの周辺もかまびすしくなった。ベネズエラのソビエト化に始まり、南米諸国へもチャベス外交の輸出が始まるのか。同大統領は十二月四日、国会議員選挙で一〇〇%の与党議席を占め、事実上の独裁政権を樹立した。
代表制民主主義の上に、国民参加型ではなく、国民が選んだ参加制民主主義を据えた。有権者四人につき一人の代表者が投票権を得る。形式だけは公選である。原油輸出で上がる資金力にものを言わせ、補助金や癒着、威嚇などの手段で国民を丸め込んだ。
民主主義の弱点を逆用して、民主主義を破壊したのだ。チャベス流独裁への移行プロセスは、ブラジルの軍政時代の手法と同じ。ドイツのヒトラー政権も、同様のプロセスをたどって専制政治を行った。
次は国際社会でのベネズエラ承認だが、その第一弾がメルコスル加盟といえそうだ。加盟条件に民主制度が導入されている国とある。ベネズエラには、汚職大統領と詐欺的政党の長い歴史がある。チャベスは富者を挫き、貧者の味方が売り物だ。
一体メルコスルは、どこへ行くのか。それはチャベス大統領に聞けといいたいが九日、アルゼンチン大統領の音頭で同国の加盟が正式に認められ、これまでのメルコスル指揮官ルーラ大統領の影は薄くなった。
キルチネル亜大統領の言葉を借りるなら、頼りになる男が一人増えただけという。亜国はエネルギー危機と債務の肩代わりで、ベネズエラを必要としていた。チャベス大統領は亜国の紙くず債券九億八五〇〇万ドルを引き受け、国際通貨基金(IMF)と亜国間の緊張を緩和した。
亜国はベネズエラの支持を得て、メルコスル域外共通関税の二年延長をズルズル延ばすつもりだ。工作機械やIT資材の特別輸入関税も、五年延長を強行するつもりらしい。この調子で亜国が振舞うなら、ブラジルはベネズエラ加盟でハシ食う恐れがある。
亜国は議決権のないメルコスル議会を二〇一四年までに設置し、メルコスル構造基金の設置を〇六年の初回会合で提議する考えだ。基金の出資額は加盟国の取引額に比例して出資する。ブラジルは年々、縄張りを失い、ベネズエラの加盟でさらに縮小する。
メルコスルは悪いときにチャベス大統領の飛び入りで番狂わせを生じた。亜国の駄々で混乱気味であったところへ、さらに頭痛の種が舞い込んだ。ブラジルにとってメルコスルは、益々魅力半減である。国際環境との絡みと加盟各国の足並みの乱れ、代表らの見解の相違などから見てメルコスルは、内部分裂を起こすのではないか。