ブラジルの新年展望

1月1日(金)

■活況呈する産業界=金利大幅引き下げ見込んで=W杯需要も追い風

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】二〇〇五年第3・四半期の国内総生産(GDP)がマイナス成長に終わったのに加えて十月も同様の状態となり、産業界には暗澹(あんたん)たる雰囲気が漂ったが、一転して年末商戦が一昨年並となったことで、一安心した形となった。さらにその余波で一月と二月の注文も活発化したことで、例年の年末年始の集団休暇を返上して生産のピッチを上げる企業も出ている。今年は大統領、上下議、州知事の選挙があり、加えて金利の大幅引き下げが確実視されていることから、大量の資金が市場に流入すると予測され、産業界も活況を呈するとみられている。またサッカーのワールドカップ開催年で、関連産業とくにテレビやビデオのメーカーは在庫備蓄に大わらわとなっている。
 国内産業界は〇五年第4・四半期の生産が順調に推移したことを受けて追い風に乗り、今年は幸先の良いスタートが切れそうな状況で、明るい展望となっている。昨年第3・四半期の国内総生産(GDP)が前期比一・二%のマイナス成長に終わり、昨年全体のGDP成長は二%台に落ち込むとの大半の見方だったが、第4・四半期で挽回したことで、結局三%に落ち着くとみられている。
 第3・四半期のマイナス成長が十月にも飛び火したため、そのままの推移で新年を迎えるかと思われたが、十一月になり好転、クリスマス商戦も販売でマイナスが予想されたにもかかわらず、いざフタを開けてみると前年比二%増の好結果となった。この勢いが新年になっても止まらず、一月と二月の注文が早くも入った企業も出ている。
 このため例年、年末年始に集団休暇を取る企業が多いが、これを返上して生産のピッチを上げているところもある。年初は例年、クリスマスプレゼントや夏期休暇による旅行などで散財が多く、また二月の新学期に向けて学費の納入や学用品購入などで支出が増えることで、消費が急減し「夏枯れ」となるが、今年は様模様が変わっている。
 この原因として、今年の大統領および下院議員選挙に伴い金利の大幅切り下げが予想されることで、上半期に大量の資金が市場に流入することが挙げられ、またサッカーのワールドカップ開催年のため、とくにテレビの売上げが急増し、それにともなって企業の公告宣伝費が増加し景気活況に貢献するとみられている。テレビメーカーのフィリップスはマナウス工場の従業員三千人の集団休暇を返上して、年末に薄くなった在庫を増やすべく生産を増やしている。ワールドカップで例年より一〇%の売上げ増を期待している。
 半自動洗濯機、冷水飲料装置、ろ過水装置などのメーカーのラチナ社も休暇返上でクリスマスと大晦日だけの休日でフル稼働している。とくに冷水飲料装置は生産が追いつかないほどの注文で、良い新年を迎えたと手放しで喜んでいる。
 ある家電メーカーでも十一月半ば以降に注文が殺到したため、生産工程ラインを増やした。さらに配達スピードアップするため配送トラックの運転手を二人同乗させて交替で運転し、効率を上げる工夫もしている。このメーカーでは「時間との闘い」を強調、このほか自転車、固定電話、ガスコンロ、携帯電化製品にも注文が殺到した。
 商店筋では五月に始まった一連の政治スキャンダルで消費者の信頼を失ったと想定、例年の年末商戦の注文を控えたが、十一月に入り消費が好転したことで、工場に注文が殺到した形となった。サンパウロ州商業連盟では、九月と十月の消費の伸びが前年比マイナス成長となったことから〇五年の年末商戦はマイナス一二%と踏んだが、いざフタを開けてみると前年比二%の増加となり笑顔が戻った。ショッピング業界では〇五年当初、一一%の伸びとの予測を途中で五%に下方修正したが、結果は八%の増加となった。
 工業生産の好不調のバロメーターに、国道でのトラックの料金所通過台数と段ボール紙の生産がある。陸送が主体のブラジルでは、料金所通過台数は工場からの製品の配達をし、好況だと通過が頻繁となる。九月と十月はそれぞれ前月比一・七%、〇・六%の減少となったが、十一月は二・四%増となり、回復を見せつけた。
 段ボール紙は製品梱包用で出荷が増えると当然段ボールの需要も増える。段ボール紙の生産は十月で前月比二・六%の落ち込みとなったが、十一月は一・三%増と回復した。同業界によると、肉牛の口蹄疫発生で輸出が減少したのが原因だが、十一月に入り正常に戻ったと話している。牛肉の輸出は全てが段ボール箱に詰められる。このほかテレビやDVCの家電の売れ行きが好調なため、段ボール需要は順調に推移するとみられる。

■今年も波に乗る輸出=年1500億ドルも夢でない

 【エスタード・デ・サンパウロ紙一日】経済開発協力機構(OECD)は二〇〇五年の経済成長率を七・二%、〇六年は九・一%と極めて強気の予測をしている。ブラジルは波に乗って〇六年も〇五年と同額またはそれ以上の輸出を達成するという楽観的見方だ。
 しかし、世界貿易の中でブラジルが占める割合は、わずか一・三%と低率を保ち、ここから脱せないのが残念である。世界貿易機関(WTO)は慎重な見方で〇六年度経済成長率を七%としたが、それでも国際環境は良好といえそうだ。
 フルラン産業開発相は国内経済が第3・四半期に冷え込んだのに反し、〇五年度輸出総額を一二〇〇億ドルと明るい見方をしている。〇五年は始めの八カ月間で、前年同期比二四%増と輸出を飛躍させ、同相は産業人の意地を見せた。
 OECDとWTOのデータから見て、ブラジルはまだ小さい。〇五年の国際貿易額は八九兆ドルに達する見込みである。その中でブラジルが一二〇〇ドルを達成しても、わずか一・三%の分け前に過ぎない。下手したら一%かも知れない。
 もし〇六年に一三〇〇億ドルに達すると、事情と環境が変わってくる。OECDの予測通り国際経済が九・一%伸びると、国際貿易額は九七兆ドルに上る。ブラジルは現状維持のため、一三〇〇億ドルの輸出を保たねばならない。
 同産業開発相は為替政策不在のブラジルでは、一三〇〇億ドルの輸出は極めて困難だと悲観的である。輸出する商品と意欲は充分あるが、当局の悲劇的為替対策で、輸出は討ち死に状態にある。
 結論をまとめると、一%以下と心配していたほど悪くない。要するにやる気があるかだ。輸出促進には先進国の物々交換方式をブラジルも取り入れることだ。経済成長率九・一%とは、チャンスが大きく開かれていることを意味している。ブラジルはこれまで隣近所の小物ばかり相手にしたので、視野が狭い。
 過去二年間の輸出努力に為替政策の改善が見込まれるなら、年間一五〇〇億ドル輸出は夢ではない。ブラジル輸出特産物五十品目中、四十六品目は〇三年から〇四年に三二・四六%の輸出増があった。七品目は世界のトップクラスにある。二十一品目は十番以内に入っている。

■過去最高更新の見通し=自動車、基幹産業の面目維持

 【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】二〇〇五年の国内自動車生産は、十二月の集計数字が発表されていないが、〇四年対比一〇・四%増の二四四万台となり、史上最高の水準に達した。〇六年はブレーキがかかるものの、四・五%増の二五五万台と予測され、〇五年の最高記録を更新し、基幹産業の面目を維持する見通しとなっている。
 国内販売は〇五年に前年比七・七%増に相当する一七〇万台となり、〇六年は七・一%増の一八二万台と予測される。この好調の背景には長期月賦の手続きの簡素化に加え、アルコールとガソリンの燃料併用車(フレックス燃料車)の好評が挙げられる。フレックス燃料車は売上げの七〇%を占め、今後も世界的に拡販されるとみられている。
 同産業のキーポイントである輸出は、〇五年に前年対比三三・六%の驚異的な伸びを示したが、〇六年は悲観的要素が強く、わずか三%の伸びと予想されている。〇五年は過去最高の一一二億ドルの輸出実績となったが、〇六年は最高記録を上回るものの、一一五億ドルと僅差となる。
 輸出は一年間ドル安に悩まされ、当初の予測の八六億ドルを辛うじて上回ったのは、世界需要が旺盛だったことによる。しかし、ブラジル側がドル安で採算が取れぬことを理由に契約を破棄した顧客が多々あり、このため〇六年の輸出の伸びを危惧する向きもある。この場合、業界ではトラック輸出に注力する意向を強めている。トラック一台で乗用車五台から六台分の利回りになるからだ。
 〇五年の生産台数の二四四万台は、生産能力の三二〇万台の七六%という低率ながらも世界の風潮を反映している。全世界の生産能力は七七〇〇万台だが、〇五年は七八%に相当する六〇〇〇万台が生産された。これが二〇一二年には一〇〇〇万台増になるとみられている。しかし短期的には不振にあえいでおり、向う二年間で三十五工場が閉鎖の憂き目にあうと予想されている。
 いっぽうで中国とインドの台頭は目ざましく、近い将来はブラジルから加えた三国が世界でしのぎを削るライバルになると見られている。
 販売は十一月に急伸して一五万八四〇〇台、十二月は十七万台の見込で、これにより第4・四半期の統計は四六万六一〇〇台となった。