2006年1月4日(水)
帰国した訪日就労者が事業を始めることを支援するプロジェクト「デカセギ起業家」に対して、中小零細企業支援事業団(SEBRAE、以下セブラエ)が主体になり、米州開発銀行(IDB、以下米開銀)が協力する形で合計三百十万ドル(約七百二十三万レアル=約三億六千万円)を投資して実施することになったと昨年末に発表された。これはブラジル・デカセギ協会(ABD=マリア・エレーナ・ウエダ会長)=本部パナラ州クリチーバ市=が〇四年に実施した調査結果を受けて始まった。百周年を迎える〇八年までには何らかの結果がでるのではと期待されている。
ニッケイ新聞の取材に対し、ウエダ会長は「今年三月には本格的に開始されます。これにより一千人のデカセギ起業家が誕生するのではと予想されています。おそらく百周年までにはなんらかの成果が発表できるのではないでしょうか」と嬉しそうに答えた。
〇四年に同協会が行った訪日希望者、日本在住のデカセギ、帰伯者合わせて千五百人に行った調査結果をもとに、このプロジェクトは発案された。同調査によれば、在日デカセギの五〇%が「帰国して事業をはじめたい」と考えている。
セブラエは連邦政府が七二年に創立した団体で、二十六州および直轄領に約六百カ所の支所を持つ。中小零細企業が国内総生産の二割を叩きだし、全労働手帳所持者の四四%を雇用する。この傾向を支援強化するのが目的だ。
このプロジェクトを構想した同事業団は、三百十万ドルのうち米開銀から半額の資金協力をえた。エスタード紙十二月二十七日付けによれば、米開銀負担分の百五十五万ドルの十分の一は先月中に振り込まれる。〇六年からの四年間で実施される。
ウエダ会長の説明では、米開銀としては、今回はまずデカセギ対象に国外就労者への起業支援方法を確立し、それを今後、北米やポルトガルなどからの帰伯者にも応用するノウハウを得たいと考えている。
具体的な段取りとしては、三月ごろまでにセブラエが帰伯起業希望者向けのホームページを立ち上げ、ブラジル内の産業動向などの経済情報とともに、起業講座をはじめる。このインターネット講座では事業を起こす上での注意点や心得、手順などを無料で学べる。
また、三月までに名古屋にセブラエの駐在員を派遣し、実際に相談にのる。帰伯する前に、どんな事業を始めるかを決めてもらう。
同協会の調査によれば、デカセギは平均六万ドルを起業資金として用意している。ランショネッチ、洗濯屋、フランチャイズなどを始める者が多い。資金を有効に使うため、帰国後すぐに各地の支所に相談して具体的な起業プランをたてるよう推奨していく。
デカセギの多いサンパウロ州、パラナ州、パラー州、南マット・グロッソ州の四州の各支所で、特にこの支援事業を強化する。
ウエダ会長は「デカセギ向けの特別有利な銀行融資があるわけではありませんが、日本にいる時点から十分に準備してもらい、失敗が減るように支援することを重視しています」と強調する。「百周年のころには何らかの成果がでているのでは」。
セブラエの予測では、約一万人がインターネット講座を受講し、うち一千人が実際に起業すると見られている。帰伯者が経済的に成功すれば、日系社会も潤うかもしれない――。日本で資金、ブラジルに投資、日系社会の活性化という筋道ができる可能性がある。新たなる百年紀のモデルとして注目されそうだ。