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裸の大統領を見る国民=消えた〃オーラ〃=政治危機から多くを学ぶ=史上前例のない構造汚職

2006年1月11日(水)

 【ヴェージャ誌一九三六号】左右両派から異端児とされる政治学者のボリヴァル・ラムニエル氏は、ルーラ大統領のオーラが消え、国民は裸の大統領を見ることができると述べた。同氏は一九六四年、米国で博士号を取得。六六年、ベロ・オリゾンテ市在住の妻子を訪ねたところを軍事政権によって拘束された。正規の手続きも経ずに拘束された政治犯として話題を呼んだ。三カ月後に仮釈放された一家は米国へ移住した。ブラジルへは六八年に帰国し、政治学教授として教鞭を採る。
 以下は、同氏との一問一答である。
 【ルーラ政権に対する評価は】残念だが失格。第一の理由は、国民から大きな期待を寄せられて出現した政府が前政権の経済路線を踏襲したこと。踏襲するなら、もっと寛大な金利政策を採るべきだった。労働者党(PT)は二十年間、非現実的な経済政策を主張してきたのだ。外交政策は対キューバや対ベネズエラ外交で国際社会の誤解を招くようなことばかりをしている。総合的にはフルラン産業開発相が言うように、政策に計画性も具体性もない。
 社会面では宣伝臭が強いが、下層階級の児童就学に力を入れた生活扶助制度だけは評価する。倫理面は党が最も誇ったモラルの面で汚職という問題を起こし、自ら党理論に溺れた。
 【倫理のつまずきで、PT崩壊のような騒ぎだが】東欧が社会主義の看板を下ろしたときにPTは創立した。それでPTはマルクス主義とレーニン主義を区別し、左翼イデオロギーの変革を発表した。倫理観は、歴史観やマルクス経済理論に優るものであった。
 党綱領からみると、PTを形成している学生や労組、有識者、宗教関係者、公務員などのグループは一つになれない。この中には古い考え方に執着し、時代の変化を理解していないグループがいる。PTを融合し統一するには、PT教会の教理をつくり、党をまとめる必要がある。教理以外は全て間違いだとして断罪するのだ。
 【PTは汚職をブラジルの先天性持病というが】今回の構造汚職はブラジルの歴史に前例がない。この構造はPTが長い時間をかけて考案したものだと思う。ブラジルには犯罪組織や秘密結社が帝政時代からあり、広報活動と銀行、企業、海外にネットワークを持つ団体を結びつけることをつねに考えていた。
 ドゥーダ氏がいう海外にネットワークを持つ国際組織の犯罪では、ヴァレーリオ氏は一角に過ぎないのだ。事実はマスコミが報道するような単純なことではない。組織は大統領選の資金カンパだけが目的ではない。ブラジルの政界に組織は寄生し、血を吸い続ける。組織の全容を解明しないかぎり、この類の構造汚職は根絶できない。
 【コロール政権でも、同じことをしたのか】コロール政権は時間不足で同じことはできなかった。組織は政府内に汚職の構造を張り巡らし、政権に必要な政治資金を長期にわたって供給し続ける。政権が変わっても組織は不変だ。
 【ルーラ大統領は、これらの事実を知っていたか】ルーラ大統領は、ルーラ神話の主人公になっている。だから偶像を破壊するようなことはしたくない。しかし、大統領選に出馬するために資金が必要なことは知っている。選挙資金は、はした金ではない。
 誰かがスポンサーになっていることは、どの大統領でも知っている。だから本当のことは言えない。自分のために莫大な資金がどこから出ているかを聞いたはずだ。ソアレス前財務担当というサンタクロースがお金の入った袋を持って来てくれたのか。
 【ルーラ大統領の人柄をどう思う】ルーラ大統領は、カルドーゾ前大統領のように微に入り細に入り知識豊富ではない。しかし、礼儀正しく、ジョークの上手なことで優る。前大統領はすぐに歓談できる人だが、ルーラ大統領は反対派の人間や敵をも包み込む話術に堪能な人物である。
 【ブラジルは政治危機で、どのように変わるか】良い面は、一、みんなが政治に関心を持ち始めたこと。二、国民はルーラ大統領から事態急転のマジックと人を引き込むカリスマ術を学んだこと。三、改革のメカニズムへギアが入ったこと。選挙資金にメスを入れたことに選挙裁が驚いている。政治改革は死語であったが、大統領が活を入れた。四、政治危機を教訓とし、国民も多くを学んだのは特記すべきことだ。